Research Abstract |
本年度は,昨年度から作成中であった朝鮮漢字音のデータベースを整理・拡充するとともに,研究結果を論文にまとめることを中心的に行った。 朝鮮漢字音のデータベースは,異本も含め,全部で26の中期朝鮮語文献に記載されている漢字音が対照できるようにし,また声母(頭子音),韻母(この場合,介音+主母音+末子音)、声調などさまざなま基準によって漢字音のデータを分類することが可能であるようにした。中国語中古音の声調は,朝鮮漢字音においてはアクセントの対立として反映されるが,そのアクセントは文献によって違いが見られることが多く,どのアクセントが各漢字の本来のアクセントであると言えるのかどうか,多方面から検討しなければならない。筆者は,そのようなアクセントの確定作業も行った。そして,このデータベースにおいては,実際に文献上に現れたアクセントと,筆者が推定した,本来の各漢字のアクセントとが同時に参照できるようにした。 このような作業に基づき,研究結果を論文にまとめた。雑誌への投稿はまだであるが,2002年12月7日,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で行われる「音韻に関する通言語的研究」という研究会においてこの研究を発表する予定である。 一方,これまでの調査は,中期朝鮮語において日常的に用いられていた漢字音を対象としていたが,本年度は,真言・陀羅尼に用いられていた特殊な漢字音についても調査を行った。その結果,これらの漢字音は,単に当時の中国語をそのまま読んだものではなく,真言・陀羅尼の元となった梵語(サンスクリット語)の影響も強く見られるものであることを発見した。これらの字音についても,朝鮮漢字音と同様のデータベースを作成した。 科学研究費補助金は,以上の研究に必要な書籍購入費,中期朝鮮語文献写真の作成費,影印本の複写費,ハードウェア購入費として利用した。
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