2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J05554
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 武史 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文字 / 出土文字資料 / 歌 / 古事記 / 万葉集 / 人麻呂歌集 / 日本書紀 |
Research Abstract |
前年度に引き続き,「文字の歌」の問題を中心に取り上げてきた。古事記の訓主体文が意味性に依拠しながら出来事や事柄を述べていくのに対して,仮名による歌は合理性から離れる文脈を可能にするものとしてある。「文字の歌」が定着する以前にあった「声の歌」に属するものとして位置づけられた古事記・日本書紀の歌に対し,これらもまた「書記(writing)という水準において捉えるべきであるという立場を明確にし,古事記の雄略天皇段の歌を具体的に取り上げた(「歌が仮名で書かれること」神野志隆光編『日本文学における神話テキストの<変奏>』),同様のことを仁徳天皇と八田若郎女との贈答歌においても指摘し,通説的解釈を改めるという成果を挙げることができた(「仁徳天皇と八田若郎女の贈答歌について」と題して『国語と国文学』誌に投稿中)。散文部について,古事記の文は口語的な「語り」と密接に関わるという立場で現代語訳された『口語訳古事記』(文芸春秋)に対する批判を書評において行った(「語り」論覚書『比較文学・文化論集』20号)。 また,古事記の歌を考えるうえで万葉歌における「書記」の問題についても考察を続けてきたが(古事記の歌が音仮名で書かれるのに対して,人麻呂歌集歌は訓字主体で書かれるわけで,それぞれ異なる水準で歌の表現の方法化が遂げられた),「書記」あるいは「歌集の編纂」という問題意識に基づいた新しい万葉集像を平易に紹介するという試みを行った(神野志隆光編『別冊國文学必携万葉集を読むための基礎百科』)。 古代日本が受容したと考えられる茨籍,あるいは大陸出土の全石文なども「書記」の問題の前提になるものとして研究対象にしてきたが,その過程で得られた一知見として,「弱冠」という話の用法についての従来の理解を訂正することができた(「「弱冠」について」『比較文学研究』80号)
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 福田 武史: "「弱冠」について-27歳の弱冠"比較文学研究. 80号. 160-162 (2002)
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[Publications] 福田 武史: "「語り」論覚書-三浦佑之氏『口語訳古事記』の書評-"比較文学・文化論集. 20号(未定). (2003)
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[Publications] 神野志隆光(編): "別冊國文学 必携 万葉集を読むための基礎百科"学燈社. 224 (2002)