2002 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル経済下における発展途上国の社会保障政策の比較分析
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01J05631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 百合子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グローバル経済 / 政治的民主化 / 発展途上国の社会保障政策 / 新自由主義経済政策 |
Research Abstract |
本研究は、1980年代以降、経済のグローバル化と政治的民主化が同時進行する新興産業国において、社会保障制度がいかにして再構築されているのかという問題に関して、ラテンアメリカとアジアの数カ国を地域横断的に比較研究することを主眼としている。今年度は、前年度に行ったラテンアメリカ諸国の事例研究に基づき、9月以降は米国コーネル大学において、以下の2点について研究を行った。 まず、前年度研究において収集した資料(ラテンアメリカ諸国における社会保障制度の発展に関する先行研究の整理、社会保障データの分析、社会保障改革実施に至る政治経済的背景の把握等)を用いて、具体的に民主体制下における選挙による政治的圧力がどのように社会保障政策の政策形成に影響を与えるのかについて、ラテンアメリカ諸国についての実証分析を行った。その結果、経済のグローバル化(資本およぴ貿易の自由化)に加え、各国の政治制度(選挙システムと政党システム)の違いが社会保障政策の形成に有意に影響していることを統計分析によって確認するに至った。 さらに今年度は、主として東アジア諸国の社会保障政策についての資料収集、先行研究整理、各国に関する社会保障データめ基礎的分析、および社会保障改革実施の背景にある政治経済的要因の理解に焦点を当てた。その結果、社会保障制度再構築の帰結を導く要因として、以下の点を確認することができた。第1に、ラテンアメリカ諸国と異なり、社会保障制度の歴史が浅く、そのため、既存の社会保障制度が社会保障制度改革に与える影響は、比較的小さいとの仮説を導くに至った。しかしながら第2点目として、ラテンアメリカ諸国と同様に、各国の政治制度が社会保障制度の改革過程において、異なる政治的圧力を説明する重要な要因であることを認識した。
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