2002 Fiscal Year Annual Research Report
機能的磁気共鳴画像および脳磁図を用いた文字言語の認知と表出の研究
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01J05640
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片野田 耕太 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 機能的磁気共鳴画像 / 書字 / 文字言語 / 自己相関 |
Research Abstract |
昨年度、文字言語の表出すなわち書字の脳内メカニズムを明らかにするため、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、絵の名前を呼称する、絵の名前を右人差し指で書字する、及び視覚呈示されたキューに反応して右人差し指を前後に運動させる、の3課題の遂行時の脳血流動態を比較し、左頭頂葉上部と左前頭葉後部が書字に特異的に反応することがわかった。 この実験では、書字課題時の右人差し指の運動を統制するために同指の前後運動を用いたが、この対照課題を単純無意味図形の描画課題に換えて同様の実験を行った場合、左頭頂葉及び前頭葉の賦活が弱くなることがわかった。これは、書字と図形描画とでは喚起する神経活動の差が小さく、現在の解析手法ではその差の検出が困難であるからと考えられた。そこで、微小な信号変化をより正確に検出するために、fMRI時系列の時間および空間自己相関をモデルに加えた統計手法の実用可能性を調べた。fMRIデータの統計解析では、信号時系列に実験デザインを説明変数とした回帰式を当てはめる。回帰係数及びその信頼区間の推定において、現在標準的な手法では独立誤差時系列、つまり異なる時点間ないし位置間の誤差が互いに独立であるとの前提をおく。しかし、実際のfMRIデータの誤差時系列の自己相関構造を調べたところ、神経活動が生じる皮質で特に強い正の時間および空間自己相関があり、誤差独立の前提の下ではパラメータ推定が不正確になることがわかった。これを解決するために誤差時系列に時間及ぴ空間自己相関を想定した統計手法を提案し、単純な指運動実験のデータに適用した結果、より高い検出力で主要な部位の賦活が捉えられ、またモデルのフィッティングも向上することがわかった。これにより、本統計手法が書字と描画などの複雑な高次機能課題の実験にも適用可能であることが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kota Katanoda, Yasumasa Matsuda, Morihiro Sugishita: "A spatio-temporal regression model for the analysis of functional MRI data"NeuroImage. (印刷中).
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[Publications] 片野田耕太, 松田安昌, 杉下守弘: "機能的MRIデータに対する自己回帰モデルの適用"認知神経科学. 3・3. 204-207 (2002)