2002 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニック家畜(家禽)確立と導入遺伝子サイレント化防止に関する研究
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01J05724
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江原 史雄 東京大学, 大学院・農学生命研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DNAメチル化 / エピジェネティック / 雑種世代 / RLGS / 脱メチル化 / ジーンサイレント |
Research Abstract |
ゲノムDNAのメチル化は、さまざまな生命現象に関わっていることが明らかになってきている。なかでも、哺乳類では遺伝子活動の完全な封じ込み(ジーンサイレント)の分子機構として注目されており、家畜の改良を目的に有用遺伝子を個体に導入し、発現させようとする場合にも深く関わっていると考えられる。また、異なった形質の導入という点では、雑種世代での遺伝子発現機構とも関係があると思われる。雑種世代で親の世代には見られなかった形質が現れるという現象は雑種強勢等で知られているが、それらの機構はわかっていない。ここで何らかの遺伝的変化が起こったとかんがえると、雑種でのみ発現する遺伝子は、親の世代で発現が押さえられていたものが、脱メチル化などのエピジェネティックな変化により抑制が解かれたと考えられる。 そこで、はじめに、哺乳類(マウス)の純系と雑種世代におけるゲノムのメチル化パターンの違いを比較した。比較には、二次元電気泳動を基礎としたRLGS法を用いた。この方法を用いることにより、一度に1,000以上のランドマークをスポットとしてスキャニングできるため、ゲノム上の脱メチル化領域を効率よく検出できる。そこで得られたスポットを比較すると、純系では現れないが、雑種世代で検出されるスポットが2種類、反対に、純系で検出されるが、雑種世代では消失しているスポットが1種類発見された。さらに、これらのスポツトは、雑種世代特有のものであった。これらの結果より、雑種世代ではメチル化のパターンが変化しており、ゲノムDNAにエピジェネティックな変化が起こっている事が明らかになった。今後は、今回メチル化が変化した領域が遺伝子発現調節に関わっているのかを解析していく。さらに、同様の方法を用いながら、トランスジエニック家畜の遺伝子発現調節についての解析も行う。
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