2002 Fiscal Year Annual Research Report
脳動脈瘤の破裂における流体力学的メカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
01J05776
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥井 亮 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脳動脈瘤 / 流体構造連成 / 数値シミュレーション / 血管弾性 / 壁面せん断応力 |
Research Abstract |
本年度は昨年度作成した流体構造連成数値解析プログラムを用いて,昨年度より現実に近い条件で脳血管における流体力学的因子と血管壁の変形との関係を解析した.血流が血管壁に及ぼす流体力学的因子は,脳動脈瘤をはじめとする血管障害の進行に重要な役割を果たしていると考えられており,脳動脈瘤の破裂要因を解明するためには血管壁面に働く流体力を解析することが重要である. 動脈壁および動脈瘤壁の変形を考慮し,直円管で血管を近似したモデル,およびCTより形状を抽出した3通りの実形状血管を対象に数値解析を行った結果,以下の4パターンで血管壁の変形が内部の流れと壁面上の応力分布に影響を与えることが示された. (a)血管が半径方向に膨張・収縮することにより,血管内の流れ場に管軸と垂直な断面内の2次流れが生じる (b)血管が複雑な曲がりを有する場合,曲がりの影響で血流が壁面に押し付けられ,血管壁面付近に大きな速度勾配が生じる.そのような領域において血管壁面が変形すると,壁面付近の速度勾配が大きく変化させられる (c)血管が分岐を有する場合,分岐部に衝突する流れが存在し,その衝突部付近の血管壁が変形することにより血流の衝突部付近の流速分布および速度勾配が大きく変化させられる (d)(c)で述べたよう准血流の衝突が起きる場合,衝突部の上流部の血管が膨張・収縮することにより,分岐部付近に衝突する血流の速度が変化させられる これら血管壁の変形が血流に与える影響は,いずれも結果として壁面せん断応力の分布に影響を与えるものである.本年度の研究により,血管壁面の変形が血管内の流れ場および血管壁面に与える影響と,そのメカニズムが示された.このことにより,壁面の変形が脳動脈瘤の破裂メカニズムを探るために考慮すべき重要な因子のひとつであることが示され,脳動脈瘤破裂メカニズムを探る上での重要な手掛かりが得られた.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ryo TORII, Marie OSHIMA, Toshio KOBAYASHI, Kiyoshi TAKAGI: "Numerical Simulation of Fluid-Structure Interaction of The Intracranial Artery"Proceedings of 4^<th> World Congress on Biomechanics. (CD-ROM). (2002)
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[Publications] 鳥井亮, 大島まり, 小林敏雄, 高木清: "実形状脳動脈瘤の流体構造連成数値シミュレーション"第15回バイオエンジニアリング講演会講演論文集. 159-160 (2003)
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[Publications] 鳥井亮, 大島まり, 小林敏雄, 高木清: "脳血管内血流と脳動脈瘤との流体構造連成解析"第8回日本計算工学会講演論文集. (予定). (2003)
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[Publications] Ryo TORII, Marie OSHIMA, Toshio KOBAYASHI, Kiyoshi TAKAGI: "A Numerical Fluid-Structure Interaction Analysis of Cerebral Anerurysm"Proceedings of USNCCM7. (予定). (2003)
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[Publications] 鳥井亮, 大島まり, 小林敏雄, 高木清: "実形状脳動脈瘤に作用する流体力と壁面内部応力の数値解析"2003年度日本機械学会年次大会講演論文集. (予定). (2003)