2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神長 英輔 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日露関係 / 水産業 / ロシア極東 / 北洋漁業 |
Research Abstract |
(1)2002年度の研究内容 本年度の研究は日露戦争直前期のサハリン島水産業を対象として、この時期に起こった漁業紛争に注目した。 研究の基本的な材料となった史料は農商務省水産局の『露領薩哈嗹島漁業調査報告』と外務省の『日露交渉史』、プリアムール国有財産局の報告書、プリアムール総督の皇帝宛報告書などである。 今年度の研究では紛争の事実関係を整理して紛争の基本的な経過を追った。この際,サハリン島で展開された漁業制度の実態や政策の目的、その結果を明らかにした。その上で紛争の構造を提示することができた。研究で得られた具体的な内容は以下のとおりである。 この漁業紛争の実態は法的根拠のない既得権をめぐる日本の水産業者とロシア当局の間の政治的な対立だった。しかし、両政府(地方政府を含む)を窓口とした交渉が断続的に行われていたために決定的な対立は回避され、現実的な現状維持の決着が繰り返される結果となった。ロシアと日本の業者の間に直接の対立関係はなかった。むしろ、漁場の名義の転貸借や労働者雇用の問題などのように、双方は共通の利害関係下にあった。 紛争の焦点は初期は税額、後には徴税の方法や労働者雇用の問題へと移った。漁場貸下げ方式は長期にわたって問題の焦点となり続けた。ロシア側の政策目標が確立された1900年ごろからは、日本人による経営の是非そのものが問題となった。 (2)2002年度の資料収集・調査の状況 2002年11月には、ロシア国立図書館(モスクワ)とロシア国立図書館(サンクトペテルブルク)でプリアムール総督府の関係の資料を中心とした資料調査・収集を行った。そのほかに北海道大学附属図書館,東京大学附属図書館,国立国会図書館などでも資料収集・調査をおこなった。
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Research Products
(2 results)