2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06078
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東中野 多聞 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 終戦 / 陸軍 / 海軍 |
Research Abstract |
戦争末期の政治史は、継戦派と終戦派の対立として描かれることが多い。だが、終戦に重要な役割を果たした人物は、そのほとんどが陸海軍軍人であり、彼らの軍事面に対する関心はきわめて高かった。昭和天皇も例外ではない。戦局が悪化する中では、軍事的な見通しこそが、政治的な判断の基礎となるはずである。本年度の研究は、従来看過されがちだった軍事面に注目し、軍事的諸構想や対立を明らかにした。 本年度の研究成果の一つとして、「遠藤三郎と終戦〜戦前から戦後へ(附)遠藤三郎関係史料目録」(『東京大学日本史学研究室紀要』第7号2003年3月)が挙げられる。遠藤三郎は軍需省航空兵器総局長官として、日本の国力と戦局とを知り得る軍人であった。そして、遠藤の分析を通じて、軍人の作戦思想と戦争終結に対する考え方との関係を明らかにした。また、狭山市立博物館が所蔵する遠藤三郎関係史料の整理を行い、日記を中心とした仮目録を作成し、紀要に公表した。 総力戦の段階においては、国力をともなわない作戦は成立し得ない。また、陸軍と海軍では作戦思想が根本から異なる。必然的に、参謀本部、軍令部、陸軍省、海軍省の四者の間では摩擦が生じるのである。現在、陸相東条英機と海相嶋田繁太郎が、統帥部長を兼任したことをとりあげ、これらの対立がどのような政治的影響をもたらしたかを解明している。 また、昭和天皇の軍事思想の解明も課題の一つである。国内を二分した政治対立においては、昭和天皇の発言は決定的な意味を持ち得た。今後は、昭和天皇の軍事思想が、沖縄戦や終戦の決定にどのような影響を与えていたのかを明らかにしていく予定である。
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