2002 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応システムのマイクロチップ集積化に関する研究
Project/Area Number |
01J06146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 有希 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マイクロチップ / マイクロ化学システム / 細胞培養 / バイオリアクター |
Research Abstract |
生体触媒や細胞を用いたバイオリアクターは、温和な条件下での高効率な反応や選択性の高い合成能などにより、注目を集めている。そこで本研究では、細胞の機能を利用し、より高機能な化学システムを実現することを目的とした。そこで我々は、細胞の機能を利用したより高機能なマイクロ化学システムを実現することを着想し、高い物質代謝能を示す肝細胞を利用したバイオリアクターチップの実現を目的とした。通常、肝細胞はその機能を維持したまま生体外で培養することが非常に困難とされているため、本研究では、マイクロチップ内での最適な培養条件について検討し、細胞の活性について物質合成能などの点から評価を行った。マイクロチャネル中の培養槽は、体積が非常に小さいため、細胞からの放出物を高濃度のまま検出できるという利点がある反面、溶存酸素量などが限られているために、長時間培養するには適さないという問題点があった。肝細胞は特に酸素要求性が高いため、培養開始後、数十分で培養槽内の酸素が消費されてしまうと見積もられた。そこで、培地を培養槽に潅流しながら培養するシステムを構築した。流体の制御に電気泳動ではなく圧力を用いているため、細胞に影響を与えず潅流することが可能である。細胞を導入してから約1時間で細胞がガラス表面に接着するため、その後シリンジポンプを用いて培地を0.2〜1μL/minの速さで培養槽中に潅流した。潅流しなかった場合は、培養開始してから2時間経過後、細胞の活性が低下する様子が観察されたが、潅流した場合には、3日後も細胞が良好に生存している様子が観察され、この細胞のアルブミン産生能や尿素合成能も通常のバルク培養系とほぼ同程度であった。この結果より、培地を潅流させることで、細胞の機能を維持したまま長時間培養できることが示された。 今後、この結果を利用したバイオリアクターシステムを構築して、実際に細胞に物質生産を行わせる予定である。
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