2003 Fiscal Year Annual Research Report
外珠皮・内乳の祖先器官推定に基づく被子植物の起源に関する研究
Project/Area Number |
01J06240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 敏弘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原始的被子植物 / 外珠皮 / 心皮 / YABBY gene family / 珠孔-へそ複合体 / ANITA |
Research Abstract |
原始的被子植物アウストロバイレヤ目の胚珠・種子発生過程を観察した.その結果,本目においては幌型(左右対称)の外珠皮からコップ型(放射相称)の外珠皮が派生的に生じたことが明らかとなった.さらには,幌型の外珠皮を持っ胚珠からは珠孔-へそ複合体を持つ種子が,コップ型の外珠皮を持つ胚珠からは珠孔とへそが外種皮によって隔てられた種子が生じることが示され,これまでに知られている最古の被子植物化石は珠孔-へそ複合体を持つことから,幌型の外珠皮が原始的である可能性が示唆された. さらに被子植物の代表的な共有派生形質の1つである心皮の進化過程について検討した.心皮の形質状態の中では,袋状が原始的であると考えられているため,袋状心皮の形態形成を詳細に観察することは,心皮の進化過程を考える上で重要な意味を持つ.これまでの形態学的研究により,袋状の心皮形成は,心皮原基の花序軸に面した部分が貫入することで形成されると考えられてが,この貫入する部分に,向軸・背軸両側の組織が含まれるのか,向軸側組織のみなのかは明らかになっていなかった.そこで,原始的被子植物アンボレラからYABBY2相同遺伝子を単離し(AmbF1),その発現をin situハイブリダイゼーション法で観察することでこの問題の解決を試みた.その結果,AmbF1の発現は心皮,雄蕊,花被片,葉原基の向軸側で観察された.シロイヌナズナ・タバコにおいてYABBY遺伝子は側生器官の背軸側で発現していることが知られているが,アンボレラでの結果は,向軸-背軸に沿った発現をするものの,これと正反対であった.また心皮原基におけるAmbF1の発現に基づけば背軸・向軸組織の区別が可能で,貫入する部分が向軸側の組織のみであり,背軸側の組織を全く含まない事が示唆された.この結果は袋状心皮が,二つ折れ状態を経ないで生じた可能性を示唆している.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Yamada, R.Imaichi, M.Kato: "The outer integument and funicular outgrowth in the ovule of Magnolia grandiflora (Magnoliaceae)"Journal of Plant Research. 116. 189-198 (2003)
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[Publications] T.Yamada, M.Ito, M.Kato: "Expression pattern of INNER NO OUTER homologue in Nymphaea (Waterlily family, Nymphaeaceae)"Development Genes and Evolution. 213. 510-513 (2003)
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[Publications] T.Yamada, R.Imaichi, N.Prakash, M.Kato: "Developmental morphology of ovules and seeds of Austrobaileyales"Australian Journal of Botany. 51. 555-564 (2003)