2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06243
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊勢 優史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 系統分類 / センコウカイメン科 / 琉球列島 / 分子系統 / 海綿動物 |
Research Abstract |
私は、前年度から引き続き、沖縄周辺海域のセンコウカイメン科の分類学的研究を進めており、幾つかの興味深い結果を得ている。 まず、琉球列島の浅海域よりCliona inconstansを初めて記録し、形態及び生態からその属の所属を考察し、これまで誰も確認したことがなかった、カイメンが体の中に取り込んだ基質に対する侵食作用を発見した。この結果は「サンゴ礁砂礫底に生息するセンコウカイメン類」という演題で、第38回日本動物分類学会にて口答発表を行った。続いて、イタリアのジェノヴァで行われた第6回国際海綿学会に於いて、「Psammobionitc Clionaidae (Demospongiae : Hadromerida) in lagoon of the Ryukyu Islands, Southwestern Japan.」という演題で口答発表を行った。 国際学会以降は、Clionaidae科内の系統を調べること、及び、Clionaidaeの信頼できる諸分類形質を再検討する目的で、DNAの塩基配列を用いた分子系統学的研究を進めている。現在までの結果によると、前述したCliona inconstansは、これまで知られていたよりもはるかに多様な外部形態を取り、骨片の外部形態も多様である事がわかった。そして、遺伝的に、枝状の外部形態をとり出水孔が0〜1個開くもの、及び、塊状で出水孔が複数開くものの二タイプに分けられる事が示唆されている。これは、環境に大きな影響を受けるとされてきた外部形態が、実は、遺伝的な背景をもっていたということがClionaidaeで示された初めての例である。また、これまでSpirastrella vagabundaとされていた種が、Cliona属に移されること、α〜γという一連の生態型が、同一種内での成長段階の違いである事が示された。更には、複数種を用いた分子系統学的研究より、Clionaidae科が多系統であること、及び、Cliona属すらも多系統であることが示されている。すなわち、Cliona属では、一連のchamberと呼ばれる小さな小部屋を作りながら穿孔を進めるタイプと、chamberを作らず、大きな穿孔穴を作りながら穿孔を進めるタイプに分けられそうである。
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