2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06326
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸谷 和史 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 運動視 / 高次運動刺激 / 運動定義運動 / 時空間 |
Research Abstract |
本年度は以下に述べるような大きく分けて2つの研究を行った。 現在、運動視には2種の機構が関与していると考えられている。輝度で定義された運動を周波数次元で検出する1次運動検出機構と、より複雑な属性で定義された運動の検出を行う2次運動検出機構と呼ばれるものである。前年度までにこの2次運動の一種である運動で定義されたパターンの運動(運動定義運動)を用いて、その検出過程が複数存在することを示したが、本年度はこれに引き続きこの2次運動検出機構のメカニズムについてその時間周波数特性を測定した。結果、これには複数のメカニズムが存在し、より早い時間周波数特性をもつものと、比較的遅い時間周波数をもつものが存在することを示した。これは、2次運動に対する複数のメカニズムが脳内で具体的にどのように実装されているかという点について大きな示唆を与える結果である。 また、この実験中に、2次運動刺激と1次運動刺激を同速度、同位相で呈示した際にこれらの位相のみがずれて知覚されるという新しい錯視現象を見出した。これについてより詳細な検討を行った結果、脳内における刺激処理の時間が属性によって異なり、この時間ずれが運動によって媒介されることで空間ずれとして知覚されることを示した。具体的には、この知覚上での空間ずれを、物理的な空間ずれ、あるいは時間ずれの双方で打ち消すことが可能であることを示した。また、これによって測定したずれの値は理論的に予測されるとおり、空間次元では速度の増大とともに増大し、時間次元ではほぼ一定となった。このような初期視覚過程における時間と空間の可換性は脳内において空間位置、および時間がどのように表象されているかという大きな問題に対する重大な示唆を与えるものである。今後この起源をより詳細に検討することで、上述した問いに対するよりはっきりした解を導くことができると考えている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K.Maruya, T.Sato: "Separated processing of local motion signal depending on its polarity in MDM detection"Journal of Vision. 2(7). 390 (2002)
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[Publications] Kazushi Maruya, Takao Sato: "The perceptual offset between luminance-and motion-defined motions"Proceedings of Second Asian Conference of Vision. 8 (2002)
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[Publications] 丸谷 和史, 佐藤 隆夫: "2種の運動定義運動検出機構の時間周波数特性"日本心理学会第66回大会発表論文集. 459 (2002)
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[Publications] 丸谷 和史, 佐藤 隆夫: "2種の運動刺激間における知覚的ずれ"基礎心理学研究. (in press). (2003)
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[Publications] 丸谷 和史, 佐藤 隆夫: "運動定義運動の2検出機構の時間周波数特性を用いた分離"Vision. 15(1). 41 (2003)