2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
別所 俊一郎 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 予備的貯蓄 / 雇用不安 / 医療保険の自己負担率 / 課税の限界費用 / 世代重複モデル / 財政赤字 / 社会資本 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は,不確実性に関わる家計行動の実証分析と,社会保障制度を含んだ財政制度のマクロ的な評価の2点に関わるものである.不確実性に関わる家計行動の実証分析については2点行った.ひとつは,家計の金融資産蓄積のマイクロデータを用いた,雇用不安と予備的貯蓄の大きさに関する実証研究である.予備的貯蓄についてマイクロデータを用いて分析した研究は日本においてはそれほど多いものではなく,この研究は海外の先行研究を踏まえたうえで計測上問題が少ないと考えられる手法を用いている点でも重要であると考えられる.本研究は日本経済学会2002年度秋季大会(広島大学)において発表された.不確実性に関わる家計行動の実証分析のいまひとつは,医療保険制度に関係する.医療保険制度の設計において,自己負担率に対して家計がどのような反応を行うかという数量的評価は重要な点のひとつであると考えられるため,この点について実証分析を行った.その結果,疾病によっては自己負担率に対する反応はそれほど大きくないとの結果を得た.この結果は大日康史編『健康経済学』の一部として東洋経済新報社より出版される予定である. 社会保障制度を含んだ財政制度のマクロ的な評価については2点行った.ひとつは,課税による限界的な経済厚生の損失の計測である.限界的な税収の増加がもたらす限界的な厚生損失は,政府支出のプロジェクト評価に有用であるので,対象を労働所得税に絞ったうえで日本についての測定を行った.その結果,限界的な税収1単位の増加は近年において1.1単位ほどの限界的な損失を発生させているとの結果を得た.この結果は論文としてまとめられ,『日本経済研究』に掲載予定となっている.マクロ的な評価のいまひとつは,非確率的多期間世代重複モデルを用いた数値シミュレーションである.既存研究に社会資本の効果を含めることで,財政赤字の規模と世代の厚生についての検討を行った.この研究は本学で行われた日本財政学会において発表された.
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Research Products
(1 results)