2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規アポトーシス誘導遺伝子Noxaによる、癌化および生体機能の調節
Project/Area Number |
01J06424
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋江 司 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | DNA傷害 / アポトーシス / p53 / Bcl-2ファミリー / ミトコンドリア |
Research Abstract |
DNA傷害を受けた細胞におけるp53を介したアポトーシスの誘導は、発がんの抑制、がん治療等の観点から重要である。我々が単離、同定したNoxaは、Bcl-2ファミリーに属する分子であり、アポトーシスの誘導に関与すると考えられた。また、Noxaはp53により転写誘導されるため、p53を介したアポトーシスの誘導に関与することが示唆された。本実験ではNoxaの生理的機能の解析のため、Noxa遺伝子欠損マウスを作成した。このマウスにおいて明らかな発がん率の上昇や発達の不全は見られず、またp53に依存性であるいくつかのアポトーシスの経路のうち、胸腺細胞にX線照射を行った際のアポトーシスに関しては、野生型細胞、Noxa欠損細胞の間に有意差はなかった。しかし、マウス胎仔線維芽細胞(MEFs)にオンコジーンE1Aを発現させ、アドリアマイシン処理を行った際のアポトーシスは、Noxa欠損細胞において抑制されていた。この系において、Baxのミトコンドリア膜への組み込み、多量体化といった活性化状態を検証したところ、E1Aの発現のみでBaxの軽度活性化が見られ、DNA障害によってNoxaが誘導されることにより、Baxの活性化が増強されると分かった。一方、E1Aを発現していない細胞では、Noxaは誘導されるが、Baxの活性化状態に変化はなかった。さらに、NIH3T3細胞にNoxaを単独で発現させた際はアポトーシスは見られなかったが、E1AとNoxaを共発現させることにより明らかなアポトーシスが観察された。このことから、Noxaは、単独で発現しても機能を発揮せず、E1Aによる弱いアポトーシスの誘導経路と協調することで、そのアポトーシス誘導能を発揮するというモデルが考えられた。最近、MEFsにUV照射やエトポシド処理を行った際のアポトーシスにおいてもNoxaが関与すると分かり、その機構の詳細を解析中である。
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