2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06566
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
小池 正史 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 学振特別研究員(PD)
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Keywords | レプトンフレーバーの破れ / 原子内でのμ-e転換 / 素粒子模型 |
Research Abstract |
本研究は、自然界の粒子・反粒子の対称性(CP対称性)および時間の可逆性(T対称性)の破れの起源を、特にレプトンの相互作用から探求することを目的とする。物質を構成する粒子--クォークとレプトン--のうち、CP対称性やT対称性の破れが確認されているのはクォークのみである。今後、レプトンにおけるこれら対称性の破れの探索を通じて素粒子論的起源に迫ることができると期待されている。レプトンの相互作用は実験的探索が困難な反面、理論的に単純で本質に迫りやすい。 本年は、レプトンのフレーバー保存則の破れ(LFV)に注目した。現在までLFVは実験的に見つかっていないが、標準模型を越える様々な有望な模型において存在が予言されている。この探索によりレプトンの相互作用の貴重な手がかりが得られ、CP/Tの破れの探索や起源の解明も大きく進むであろう。 私がとり上げたのは、原子内におけるμ粒子→電子転換(μ-e転換)過程である。この探索実験においては、従来は使える原子種に制約があったが、KEKと原研によるミューオン蓄積リング(PRISM)構想では、従来実験が難しかった原子が使用可能と考えられている。実験面からも興味のあるタイムリーな研究といえる。 LFVに効く有効ラグランジアンの一般的な形から、μ-e転換の確率を計算するのに必要な5つの物理量を示した。、炭素からウラニウムに至る多種の原子の最新データに基づき、これらの量を数値的に計算した。この結果明らかになったことの要点は、(1)原子番号が30〜60程度の原子において、もっともμ-e転換の確率が大きい。 (2)いくつかの原子についてμ-e転換確率を測定することで、背後にある(標準模型を越える)素粒子模型についての手がかりが得られる可能性がある。 この成果を研究論文として出版するとともに、英国の国際会議をはじめ、国内の研究会でも発表した。
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[Publications] Ryuichiro Kitano, Masafumi Koike, Yasuhiro Okada: "Detailed calculation of lepton flavor violating muon-electron conversion rate for various nucl"Physical Review D. 66. 096002-1-096002-14 (2002)