2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06686
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
細井 保 法政大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | F.ボルケナウ / 全体主義 / ファシズム / オーストリア史 / 20・30年代ヨーロッパ政治 / Hermann Heller / Erich Zollner / スペイン内乱 |
Research Abstract |
ボルケナウのファシズム・全体主義論との比較という視点から、本年度はH・ヘラーの『ヨーロッパのファシズム』(二〇〇三年九月風行社より刊行予定)の翻訳を、大野達司法政大学法学部教授と共同で行った。ボルケナウが当時の社会学的な関心からファシズムを分析し、近代化推進独裁論の先駆けともいえるファシズム論を展開するのにたいして、ヘラーは法学的・国家学的な関心からファシズムを解明していく。ヘラーは、理性にたいして感情を重視するファシズムの行動主義を、政治の形式化にたいする反動とみなしている。 本年度はまた二〇〇〇年に和訳が刊行されたツェルナーの『オーストリア史』を東欧史研究会編『東欧史研究』二五号(四月発行予定)で書評した。ツェルナーの通史は、オーストリア史のスタンダードともいえ、同書を書評したことは現在翻訳をすすめているボルケナウのオーストリア論の特質を抽出する一助となった。オーストリア史の複雑さは、ボルケナウ自身のジレンマでもあった。同じ言語を話す民族でありながら宗教改革以降北ドイツとは異なる文化、国家を形成するものの、多くの住民がドイツとの一体化を望んでいた。ナチスドイツへの併合は、ボルケナウのようなドイツとの一体化を期待していたユダヤ人に、痛切なジレンマをつきつけたといえる。 ボルケナウとオーストリアとの関連をさらに明らかにするため、ウィーンの国立図書館、オーストリア抵抗資料館、ウィーン市公文書館で現地調査をもおこなった。国立図書館、公文書館では、ボルケナウと同時代にファシズムを批判的に分析していたオーストリア社会民主党の資料を、また抵抗資料館では、同資料館に所蔵されていたポルケナウ自身に関する資料を収集し、さらにファシズム論と全体主義論の中間に位置するかれのスペイン内戦論について、国際義勇兵への従軍経験をもつ同資料館のランダウアー教授へのインタビューをおこなった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 細井 保: "<書評>Zollner, E., Geschichte Osterreichs,リンツビヒラ裕美訳『オーストリア史』 -オーストリア史のInstitution-"東欧史研究. 25号. (2003)
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[Publications] 細井 保, 大野 達司(共訳): "H・ヘラー『ヨーロッパのファシズム』"風行社. 280 (2003)