2002 Fiscal Year Annual Research Report
「対象喪失」の心理的過程とその影響に関する縦断的・横断的研究
Project/Area Number |
01J06837
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
池内 裕美 関西学院大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 対象喪失 / 喪の仕事 / 多重喪失 / 精神的健康 / 悲嘆のプール説 / 縦断的研究 / 横断的研究 |
Research Abstract |
1.研究目的: 「対象喪失(object loss)」とは、愛情や依存の対象を失う経験であり、その種類としては、近親死や失恋、住み慣れた環境や地位、役割、さらには自分の誇りや所有物などがある。本研究は、このような対象喪失によって生じる心の変化や、喪失経験がもたらす人生における意味について実証的に検討することを主目的とているが、本年度は特に以下のような2つの実証研究を行った。 2.研究方法: (1)横断的研究 〓調査目的→多重の対象喪失体験が精神的健康に及ぽす影響について検討。 〓調査方法→関西学院大学の同窓生191名に面接調査(質問紙併用)。 (2)縦断的研究 〓調査目的→最近の喪失体験を尋ね、喪失後にたどる心理的反応段階や対処行動について詳細に検討。2年間の追跡調査を予定し、最終的には喪失の種類や状況ごとに心理的過程の類型化を図る。 〓調査方法→郵送留置法による質問紙調査。昨年度の調査時に、追跡調査依頼に応じて頂いた100名(有効回答397名中)に追加の質問紙を郵送(現在調査中)。 3.研究成果(現在までの分析において得られた知見):主なもののみ記載 (1)自分自身に関する喪失や対人関係の喪失は、回復により多くの時問を要するが、モノやペットの喪失は、比較的短期間で回復できる。 (2)当該喪失体験が自分にとって重大であると認識しているほど、また喪失予期が無く、原因が自分にあると思っている喪失ほど、悲嘆からの回復に要する時問は長くかかるが、中でも「重大さの程度」の及ぽす影響が極めて大きい。 (3)一年間の喪失体験数が増えれば増えるほど抑うつ的になり、また喪失体験数が4回を超えると身体の状態は急激に悪化する。つまり本研究では、Moss(1989)らの「悲嘆のプール」説を支持する結果が得られたことになる。
|