2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規合成戦略としての速やかな6π-アザ電子環状反応の開発とその展開
Project/Area Number |
01J06855
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 克典 関西学院大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酵素機能阻害機構 / 6π-アザ電子環状反応 / フロンティア軌道相互作用 / アミノインダノール誘導体 / サレンマンガン錯体 / 不斉エポキシ化 / Ritter反応 / 光学活性エピウレイン |
Research Abstract |
本研究は、低分子化合物による酵素機能阻害機構を解明する研究の過程で得られた6π-アザ電子環状反応を著しく促進させる置換基効果に注目し、反応を活性化させる効果の解明と速やかな電子環状反応の実現、およびそれに基づく新たな合成法の開発・展開を目的としている。すなわち、6π-アザ電子環状反応は古くからよく知られた反応であるが、その反応性を追及した研究、および、有機合成への利用例はほとんどない。平成13年度までに報告者らは、強力なフロンティア軌道相互作用に基づく、温和な条件下での速やかなアザ電子環状反応を実現した。さらにこれを基盤として、より有効に不斉転写および窒素原子供給を行うことのできる、新規な7-アルキル置換cis-アミノインダノール誘導体を見出し、高い立体選択性と一般性を以て、不斉アザ電子環状反応を達成した。 そこで平成14年度、上記の不斉アザ電子環状反応をより一般化すべく、7-アルキル置換cis-アミノインダノール誘導体の大量供給を目指して検討した結果、サレンマンガン錯体による不斉エポキシ化、続くRitter反応を鍵反応とした効率的合成法を確立することができた。そこで本不斉反応の天然物合成への展開として、インドールアルカロイドであるエピウレインの合成を検討した。その結果、エピウレインの2,4-2置換ピペリジン環の構築に、不斉アザ電子環状反応を鍵反応として用い、さらに数ステップを経て、光学活性な鍵中間体の合成に成功した。この鍵中間体のラセミ体の合成と、それからのエピウレインラセミ体の合成は既に報告されているので、これを以て、光学活性エピウレインの形式合成を実現することができた。以上のように、アザ電子環状反応の新たな反応性の理解、不斉合成への展開を経て、光学活性インドールアルカロイドの形式合成に成功し、本反応を有機合成における新たな合成戦略の1つとして展開することができたと考えている。このように2年間の研究課題、および実施計画をほぼ完了することができた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tanaka, K., Katsumura, S.: "Highly Stereoselective Asymmetric 6π-Azaelectrocyclization Utilizing the Novel 7-Alkyl Substituted cis-1-Amino-2-indanols : Formal Synthesis of 20-Epiuleine"Journal of the American Chemical Society. 124. 9660-9661 (2002)
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[Publications] Tanaka, K.: "酵素阻害機構に学ぶ速やかな6π-アザ電子環状反応 -その出会いと開発に向けて"化学. 58. 46-47 (2003)