2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J07172
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
篠原 修二 京都産業大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強化学習 / 貨幣交換 / 生成 / 崩壊 |
Research Abstract |
本研究では貨幣の生成過程を明らかにするために,学習能力をもつ主体からなる交換経済システムのモデルを構築し,数値実験を行った.本モデルで,主体の学習能力は,割引率と呼ばれるパラメータによって特徴付けられる.小さい割引率は,主体が近視眼的であり即時的な報酬のみに関心があることを意味する.一方割引率が大きいとき,主体は将来の報酬を現在の報酬と同等に評価する. 割引率の値が小さいとき,主体は消費財のみに高い価値を見出し,それ以外の財に対しては,生産財と同等かそれ以下の価値しか認めない.このため各主体は,生産財を所有し消費財を需要するという物々交換戦略を取り続ける.一方割引率の値が大きいとき,主体は長期的観点から消費財以外の財にも高い価値を認めるようになる.このとき,各主体は交換の要求を拒否されることがほとんどなく,結果的に多くの消費財を獲得することができる.つまりここでは,自分の生産財を他主体に与える代わりに,他主体から消費財を与えられるという互恵的ネットワークが成立し,各主体は非常に高い効率で,消費財を入手することができる. 貨幣交換は,物々交換経済と互恵社会の間のごく狭いパラメータ領域においてのみ出現する.ここで主体は物々交換経済でのように,消費財以外の財を全く受け付けないのでも,互恵社会でのように全ての財を受け入れるわけでもなく,自分の生産財をある特定の財とのみ交換する.このパラメータ領域において,主体は貨幣交換システムを創発することによって,社会は交換社会でありながら,互恵社会に近い交換効率を達成し得る.このように本モデルでは,物々交換経済,貨幣交換経済,互恵社会という異なる3つの社会形態を,割引率という単一のパラメータによって関連付けることができた.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 篠原修二: "物々交換経済と互恵社会の間に出現する貨幣交換システム"情報処理学会論文誌. 発表予定.
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[Publications] 篠原修二: "強化学習主体による貨幣の生成"第36回数理社会学会大会研究報告要旨集. 14-17 (2003)
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[Publications] 篠原修二: "強化学習主体からなる経済システムにおける貨幣的秩序の形成"JAWS2003講演論文集. 95-102 (2003)