2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J07172
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
篠原 修二 京都産業大学, 経済学部, PD
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Keywords | ヤドカリ / 学習 / 交換 / 貨幣 |
Research Abstract |
ヤドカリは,外敵から身を守るため巻貝の殻を利用して生活する.身体に対して大きすぎる殻は,移動の際にコストがかかる.小さすぎる殻は,身を守るために役立たない.このためヤドカリにとって,身体に適合するサイズの殻の獲得は生存に不可欠であり,その行動は生得的であると考えられている.本研究では、適切な殻を獲得することが必ずしも得策ではないような実験環境を構築し,ヤドカリの問題解決能力および学習能力について調べた. 実験では,1匹のホンヤドカリを,二つの適切な殻(殻PとP')と一つの不適切な殻(殻D)の合計3つの殻とともに小さな水槽に入れた.ただしPとP'は餌場から離れた地面に固定した.このような状況では,不適切な殻Dを選択しない限り,自由に動き回ることはできない.この実験を35個体について行った.その結果,殻が固定されていない状況と比較して,Dを選択する個体数は有意に増加した.ただし多くの個体は,Dの選択後もそこに安住するわけではなく,殻の間の往復を繰り返した.彼らはDの機動性を学習したのではなく,ランダムに引越を繰り返しているだけかもしれない.この点を明確にするため,固定された殻を出た個体が,もう一つの固定された殻とDのどちらを選択する傾向にあるかを調べた.分析は実験の前半部と後半部に分けて行った.その結果,彼らは時間の経過とともに,次第にDを選択するようになることが示された.対照実験として、全ての殻を固定してヤドカリの行動を調べた(この状況では,どの殻を選択しても機動性は得られない)が,そのような傾向は見られなかった.以上の結果からヤドカリは,実験を通してDの機動性を学習していたと考えられる.このようにヤドカリは生得的な行動パターンさえ状況に応じて可塑的に修正することができる.この成果は海外の学術雑誌に投稿中である.
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Research Products
(2 results)