Research Abstract |
本研究では,静的足底屈運動時の下腿三頭筋の協働的な作用を,筋血液量と筋形状の変化から捉えることを目的とした。被検者は筋力計(VMP-004,VINE)の椅子に,膝関節角度完全伸展位の椅座位となり、足関節角度は0°,15°底屈位(P15)、15°背屈位の3種類に規定した。それぞれの足関節角度において、10,30,50,70%MVCの静的足底屈運動を30秒間行った.近赤外線分光装置(NIRO-300,浜松ホトニクス)のプローブを,腓腹筋内側頭(MG)と腓腹筋外側頭(LG)ヒラメ筋(SOL)に日を変えて装着し,筋血液量変化を示す総ヘモグロビン濃度(cHb)を測定した.同時に3筋から表面筋電図を導出した.また,超音波Bモード法(SSD-1000,Aloka)により,上記の力発揮中のMG, LG, SOLの超音波縦断画像を取得し,筋束長と羽状角を計測し,さらにMuramatsuら(2002)の方法を用いて,筋束の曲率を算出した. MG, SOLについては,いずれの関節角度においても,安静時から力発揮時の筋血液量の変化分は,力発揮レベルが増加すると増大した.そして,減少の程度は,関節角度が底屈位になるに従い,大きくなった.一方LGは,低強度では,力発揮中の筋血液量の顕著な減少が認められず,高強度になるに従い,筋活動中の筋血液量は増加する傾向がみられた.力発揮中の筋形状については,いずれの筋においても,力発揮レベルの増加に伴い,筋束長は減少し,羽状角は増加した.さらに筋束の曲率は増大した.P15における筋束の曲率が最も大きく,D15において最も小さかった.また曲率の絶対値と変化分は共に,SOLが最も大きく,LGが最も小さいという結果が得られた.それぞれの筋について,曲率と筋血液量変化の関係をみると,MGとSOLについては,曲率が増加するほど,筋血液量の減少分が大きい傾向が得られた.P15,D15におけるMGでは,有意な負の相関が得られた(P<0.05).一方LGは,MG, SOLとは異なり,一定の傾向が得られなかった.すなわち,MGとSOLでは曲率の変化と筋血液量の変化は密接な関係を保っているが,LGでは,曲率の変化にかかわらず,筋血液量はそれに見合った変化を示さなかった.LGは,下腿三頭筋の中では,最も筋束長が長く,羽状角が小さい.また,LGの筋束の曲率は,他の協働筋に比べて絶対値及び変化分も小さいことから,LGの筋内圧の増加は小さく,そのことが協働筋間の相対的な筋内圧の不均衡を生み出している可能性が考えられる.筋内圧は,筋の張力を反映しているので,筋血液量の変化を測定することにより,協働筋間の相対的な張力発揮を知ることができると考えられる.本研究の結果より,単一筋における力発揮の変化が類似であっても,協働筋間の相対的な作用によって,それぞれの筋の筋血液量変化に相違がみられることが明らかとなった.それにより,静的筋活動時の筋血液量の変化は,協働筋間において,相対的な力発揮の貢献度をも反映している可能性が示唆された.
|