2003 Fiscal Year Annual Research Report
感覚信号伝播の可塑的相互制御:ストレスの神経機構をイメージングで解析する
Project/Area Number |
01J07398
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
池田 弘 福井大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脊髄後角 / 投射細胞 / 長期増強 / 光計測 / 痛覚過敏 / シナプス前終末 |
Research Abstract |
中枢神経で処理される各種情報の長期的な貯蔵には、シナプス伝達の可塑性が関与していると考えられている。可塑性は痛み情報が末梢から中枢に最初に送られる部位でみる脊髄後角でも起こり、脊髄後角でのシナプス伝達の長期増強は、神経損傷や炎症によって生じる病的な長期にわたる痛み、すなわち痛覚過敏の原因であるとされている。長期増強を起こすメカニズムには大きく分けてシナプス後細胞に存在する受容体の性質が変化することによって起こるシナプス後細胞のメカニズムと、シナプス前細胞の終末からの伝達物質の放出量が変化することによって起こるシナプス前細胞のメカニズムが考えられてきた。これらの概念は活動電位が前終末で発生しているという前提があって初めて成り立つにも関わらず、実際に前終末で起こる活動電位を記録することは従来の電気生理的手法では困難であり、この前提を示す結果はほとんど報告されていない。 我々はラットより脊髄横断切片を後根と共に摘出し、神経線維のみを後根より順行性に膜電位感受性色素で染めることで、神経線維及び前終末で発生する電位変化をイメージングすることを可能とした。この方法により後根への条件刺激によって刺激前は応答が見られなかった点で新たな応答が発生する点や、ごくわずかな応答しか見られなかった点で大きな増強を起こす点が見られ、これらの変化は2時間以上持続することがわかった。また、ラットの中脳へ膜電位感受性色素を注入し、そこへと投射している脊髄後角1層の細胞を逆行性に染めることで、同様の条件刺激によって投射細胞が長期増強を起こすことがわかった。さらにどちらの長期増強にもグリア細胞で生成される一酸化窒素が関与していることがわかった。 これらの結果は、新しい長期増強の概念を示唆するこのであり、痛覚過敏のメカニズムを解明する大きな手がかりとなるであろう。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ikeda Hiroshi: "Effects of corticotropin-releasing factor on plasticity of optically recorded neuronal activity in the substantia gelatinosa of rat spinal cord slices"Pain. 106・1-2. 197-207 (2003)
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[Publications] Ruscheweyh Ruth: "Distinctive membrane and discharge properties of rat spinal lamina I projection and unidentified neurons in vitro"Journal of Physiology. 555・2. 527-543 (2004)