2002 Fiscal Year Annual Research Report
塩性湿地堆積物を用いた太平洋沿岸域の古地震周期復元とそれに対する海岸環境の応答
Project/Area Number |
01J07536
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
澤井 祐紀 国際日本文化研究センター, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 珪藻分析 / 海水準変動 / 古地震 / 塩性湿地 |
Research Abstract |
平成14年度は,5月〜8月の4ヶ月間,英国北西部と北東部,米国・アラスカ州南岸塩性湿地群,米国・ワシントン州とオレゴン州において,古地震周期復元のための比較試料採集を行った.英国,米国・アラスカ州,オレゴン州においては,地震に伴った海水準変動の復元データベース作成の一環として表層堆積物の採取と植生調査を行った.採取した試料は,現地の研究者と共同で処理を行い,そこに含まれる珪藻類の組成変化を明らかにした.その結果,海水準変動の際に大きなノイズとなりえる数種を検出することができた.これは研究代表者が北海道で明らかにしてきた結果と同調的であり,日本で得られた結果は汎世界的なものであると考えられた.この作業と併せて,オレゴン州の塩性湿地において,ボーリングコア試料を採取し珪藻分析を行った.珪藻分析の結果をもとに,transfer function法を用いて海水準の定量復元を行った結果,層序境界付近において(1)隆起,(2)急激な沈降,(3)(2)の沈降後の回復(隆起の揺り返し),というサイクルが確認された.このサイクルのうち「(2)急激な沈降」と同時期に津波起源と考えられる異常な砂層が検出されたため,このサイクルは調査地における過去の地震性地殻変動の履歴であると考えられた.英国・米国で得られた結果を参考に,北海道東部の堆積物においても同様の傾向が見られるかどうかを検証するために,transfer function法による海水準の定量復元を行った.その結果,過去3000年間において北海道東部では,1緩やかな沈降,2沈降後の急激な隆起,が繰り返されていることが確認された.津波堆積物の存在などから,この繰り返しも地震性地殻変動によるものと考えられたが,同時にアメリカ西海岸と北海道では観測される変動形式が大きく違うことも確認された.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Sawai, Y., Nasu H., Yasuda Y.: "Fluctuations in relative sea-levels during the past 3000 years at the Onnetoh estuary, Hokkaido, northern Japan"Journal of Quaternary Science. 17. 607-622 (2002)
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[Publications] Sawai, Y.: "Evidence for 17th century tsunamis generated on the Kuril-Kamchatka subduction zone, Lake Tokotan, Hokkaido"Journal of Asian Earth Sciences. 20. 903-911 (2002)
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[Publications] Sawai, Y., Kitagawa, H.: "Sea-transgression events during the past 2000 years in Akkeshi lowland, Hokkaido, northern Japan"Proceeding of 15th International Diatom Symposium. 255-261 (2002)