2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島に移入された家畜ブタの起源・系統に関する動物考古学的研究
Project/Area Number |
01J07553
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
姉崎 智子 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 動物考古学 / domestication / interaction / 日本列島 / ベトナム / 下顎骨 / 形態 / 多様性 |
Research Abstract |
概要 日本産現生イノシシの形態分析による新たな分析手法の確立,その手法をもちいた現生資料と日本の遺跡資料の分析,およびベトナム北部,中国南部における動物骨資料の現地調査を実施した.またDNA分析用サンプルの収集にも努めた. 今年度は,現生野生資料のさらなる調査と,飼育下におかれた現生イノシシ標本群の調査,文献史料に飼育の記述が明確にある江戸時代の資料の分析に重点を置き,イノシシの形態および大きさについて定性的・定量的な分析をおこなった. 結果 日本産現生イノシシ形態には地理的多様性がみとめられ,関東地域の東部と西部,西日本の東部と西部,九州地域の北部と南部にわかれることが示された.また,飼育イノシシ集団を検討した結果,下顎底の湾曲形状および歯周病は他の野生集団に比べて有意に出現することを示した. 日本の遺跡資料の分析では,江戸時代の上屋敷跡より出土するイノシシ類の大きさおよび形態に多様性のあることがしめされた.下顎底の湾曲形状および歯周病が多くの個体においてみとめられること,また,文献史料において屋敷内における飼育の記述があることなどから,これらの多くが家畜ブタである可能性を指摘した.江戸前期に小型の資料が多く,中期以降に大型の資料が多いことは,移入・流通形態になんらかの変化があったことが示唆される. ベトナム北部の資料においては,同一地域に2つの異なる大きさ(大型と小型)のイノシシ骨がみとめられたが,小型の標本には飼育個体群において高頻度にみられる歯周病が多く確認された.したがって,これらはおそらく再野生化したものであると考えられる.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] H.Hongo, N.Ishiguro, T.Watanabe, N.Shigehara, T.Anezaki, V.T.Long, Dang Vu Binh, N.T.Tien, N.H.Nam: "Variation in mitochondrial DNA of Vietnamese Pigs : Relationships with Asian Domestic Pigs and Ryukyu Wild Boars"Zoological Science. 19. 1329-1335 (2002)