2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島に移入された家畜ブタの起源・系統に関する動物考古学的研究
Project/Area Number |
01J07553
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
姉崎 智子 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 動物考古学 / domestication / 日本列島 / イノシシ / 家畜ブタ / 下顎骨 / 形態 / 多様性 |
Research Abstract |
概要 本研究は,日本列島における家畜ブタの起源と成り立ちを,遺跡出土イノシシ類資料の形態学的研究により明らかにすることを目的とした.3ヵ年をかけて,日本列島と他地域の資料の検討をおこなった.今年度は,平成13年度,平成14年度に得られた成果をもとに資料の補足調査を行い,海外調査はベトナム北西部,シリア・アラブ共和国における動物骨資料の現地調査を実施した.また得られた成果についてまとめた. 成果 現生資料の調査においては,野生イノシシと飼育イノシシの間にみとめられる形態的相違を定量的に検討し,野生と飼育を比較する際の分析項目を設定した. 遺跡資料の調査では,イノシシの大きさと形態に時間的・地理的多様性がみとめられることを示した.関東地域の縄文時代から平安時代までの遺跡出土資料を分析すると,縄文時代前期と中期,縄文時代晩期と弥生時代,弥生時代と古墳時代から平安時代の間に顕著な差が認められることがあきらかとなった.また,北九州,西日本,東日本地域に分布する弥生時代のイノシシ類について検討をおこなった結果,これらの大きさには多様性がみとめられることを明らかにした.なかでも,北九州地域に位置する雀居遺跡,菜畑遺跡,下郡桑苗遺跡,吉野ヶ里遺跡および下林西田遺跡の間にみられる差は顕著であることを示した. 海外調査では,ベトナム北西部においてイノシシ類下顎骨の分析をおこなった結果,これらの大きさには従来指摘されているように大型と小型が存在することを確認した.また,DNA試料の採集をおこない得られた解析結果から,これらのイノシシ類は多型であり,小型のものの多くが飼育された個体が再野生作したものであることが明らかとなった.シリア・アラブ共和国の調査からは,アナトリア南部と同様にイノシシ類の飼育の開始時期は中車地域のなかでも比較的はやく,その変化はゆるやかなものであった可能性の高いことを示した.
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Research Products
(2 results)