2002 Fiscal Year Annual Research Report
イザベッラ・デステと芸術パトロネージ ―理想化された自己イメージの形成過程―
Project/Area Number |
01J07603
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松下 真記 お茶の水女子大学, 文教育学部, 特別研究員PD
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Keywords | イタリア・ルネサンス / 美術史 / マンテーニャ / イザベッラ・デステ / コレクション / マントヴァ |
Research Abstract |
申請者は2002年4月に地中海学会にて研究発表を行い、レオナルド・ダ・ヴィンチの残したイザベッラ・デステ肖像素描(ルーヴル美術館所蔵)が同時代のイザベッラのイメージ形成に決定的役割を果たしたこと、またそれがヴェネツィアのティツィアーノを通じてフランス宮廷にも影響を与えた可能性があることを指摘した。この折、レオナルドとティツィアーノの関係性は未知の部分が多いだけにこの可能性は興味深い、との評価を受けた。2002年9月には、マントヴァ宮廷画家マンテーニャの大理石描写に着目した論文を脱稿し、イザベッラ以前からあったマントヴァの人文主義的傾向(特にアルベルティ的傾向)について新しい切り口から考察を行った。2002年10月には申請者はイタリアに出掛け、マントヴァにてゴンザーガ家コレクション展を見学し関連書籍・文献の収集を行った。またヴェネツィア国立図書館ではイザベッラに献呈されたトリッシノ『肖像』初版本(1524年)を実見することが出来た。マントヴァ滞在の成果は帰国後に展覧会評という形で発表した。このゴンザーガ家コレクションについての近年の研究動向をまとめる作業の中で、イザベッラの後世への影響力が明らかになった。特に、一族に伝わる蒐集活動への熱望がイザベッラに端を発すること、彼女のコレクションは後代の君主達(フェデリコ、グリエルモ、ヴィンチェンツォ、フェルディナンド)によっても一族に名声を与えるものと認識されていたことが判ったことなどは重要である。一方ヴェネツィア滞在の成果は『肖像』解説・翻訳を書くことで表した。その他、研究活動を社会へ還元することに積極的に参与している。昨秋は日立一高(茨城県日立市)のホームルームに呼ばれて美術史の講義を行った。また本年度も引き続き、NPO法人ルネサンス音楽普及協会の会報にルネサンス宮廷の音楽・パトロン活動にまっわる芸術作品の解説を連載している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 松下 真記: "マンテーニャの描く大理石:「芸術家としての自然」とのパラゴーネ"『人間文化論叢』(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科). 5. 99-111 (2003)
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[Publications] 松下 真記: "イザベッラ・デステのイメージとジャンジョルジョ・トリッシノ『肖像』(初版1524年)"『ルネサンス研究』(ルネサンス研究会). (発表予定).
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[Publications] 松下 真記: "展覧会評「ゴンザーガ家.神々しきギャラリー」展(イタリア.マントヴァ2002年)"『西洋美術研究』(三元社). (発表予定).