2002 Fiscal Year Annual Research Report
ホワイトカラーの熟練形成メカニズムと企業の人事戦略及び雇用システムとの関係
Project/Area Number |
01J07759
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
上小城 伸幸 一橋大学, 大学院・商学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ホワイトカラーの熟練 / モノの見方 / 共有された価値・信念 / 組織文化 / 参与観察法 / フィールドワーク |
Research Abstract |
本年度は、前期に文献研究を主に行ない、後期に文献研究から導出した分析視座を基にして本格的なフィールドワークを行なった。 本年度前期に行なった文献研究から導出した分析視座は以下のようなものである。一般的にホワイトカラーはブルーカラーの場合と異なり仕事のアウトプットを観察することが極めて困難である。たとえばブルーカラーの場合は、どれだけ正確に組み立てが速くできるとか、どれだけ溶接が上手いなどといった、どちらかといえば観察可能な現象をもって熟練を定義している。しかしホワイトカラーのように仕事のアウトプットの観察が極めて困難な場合は、熟練は組織のメンバーの「モノの見方」から定義されている。すなわち、ホワイトカラーの熟練度はこの組織の「モノの見方」を基準にして組織のメンバーによって測定されているのである。この組織のメンバーが共有している「モノの見方」とは、すなわち組織のメンバーが共有している信念あるいは価値である。そこでわれわれは、組織のメンバーが共有している「モノの見方」すなわち組織のメンバーが共有している信念ないし価値を、「組織文化」と定義した。そこでこの「組織文化」を明らかにすることこそ、ホワイトカラーの熟練形成プロセスを明らかにすることにつながるとわれわれは考えるに至った。 しかし、組織文化は実体が存在しないため、実際に現場に居ることによって観察できる状況や耳にする話を「記述」し、それらの記述からそのときどきの状況の意味を読み取ることによってでしかその存在を明らかにすることができないと考えられている。そこで、私は文化人類学の領域において主に利用されている調査手法である参与観察法を通じて上述のような問いに接近し,記述による「客観化」を通じて「組織文化」を明らかにしようと考え、某企業の協力を得て、現在本格的なフィールドワークを行なっている最中である。
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