2002 Fiscal Year Annual Research Report
3成分系合金の数学的なモデルにおける自由境界値問題
Project/Area Number |
01J07887
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高坂 良史 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自由境界 / 曲率流方程式 / 表面拡散方程式 / triple junction |
Research Abstract |
本研究では3成分系合金の相境界の動きを記述する幾何学的な時間発展モデルを解析することを目的とする。本年度は時間発展させたときの解の挙動に関する研究を行った。その解析にあたって3相境界問題を最初から扱うのは難しいため、研究対象となる方程式の本質を知るべく、まずは2相境界問題の解析を進めた。具体的には以下の2つのことを研究した。 1つ目は、相境界の動きが曲率流方程式によって記述されるモデルの解析である。実際の研究では、曲率方程式を含むような、より一般的な非線形の方程式について解析した。この問題において、自由境界と外部領域との交点で境界条件として角度条件が課されるが、ある角度条件においては対応する自己相似解が唯一つあることを明らかにし、さらにその自己相似解が漸近安定であるという結果を得た。昨年度において、方程式が熱方程式の場合について類似した結果を得ていたが、本年度はその結果を非線形方程式に拡張できたのが成果として挙げられる。またこの問題に対する大域解の存在に関して明確に論じたものがなかったので、論文ではその証明を付した。この結果は台湾師範大学のYa-Ling Chang氏とJong-Shenq Guo氏との共同研究であり「Asymptotic Analysis」に公開予定である。 2つ目は、ある有界領域内に存在する相境界の動きが表面拡散方程式によって記述されるモデルの解析である。表面拡散方程式では線分や円弧が定常解となるが、それら定常解の安定性の判断基準を、定常解のまわりで方程式を線形化し、そこから導かれる固有値問題を解析することで得た。この結果はHarald Garcke氏(Regensburg大学)と伊藤一男氏(九州大学)との共同研究であり、現在、論文を作成中である。また、同様の手法が3相境界問題へも適用できることが期待されることから、その解析にも取り組んでいる。今後は解析半群の理論などをもちいて、非線形安定性にも取り組んでいく予定である。 以上が本年度の研究実績の概要である。
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