2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J07930
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土屋 忍 東北大学, 大学院・文学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 南洋 / 東南アジア / アジア / 戦争 / 文学 / 日本 / 近代 / 移動 |
Research Abstract |
主な研究実績について、時系列に概要を述べたい。4月には、課題研究における明治期部分を調査するため、『東北文学』を中心とする文芸雑誌の整理、分析を開始した(〜7月)。調査結果の一部が、『島崎藤村と東北学院』(東北学院、2002・10、159頁)に収緑された。東北学院の教師であったの島崎藤村の詩「椰子の実」は南洋イメージの原型のひとつであり、また南洋冒険小説の草分けである押川春浪が学院創設者の息子として『東北文学』に関与しており、このときの調査は多くの点で有益であった。5月5日には、共著『「戦後」という制度-戦後社会の起源を求めて-』(インパクト出版会、3月10日刊行)の合評会に参加。そこでとりあげられた私の論考「文学における『土人』-中河與一と村上龍-」(60枚)に関する批評が「文学史を読みかえる会」ニュースレター19号(2002・7)に掲載。この合評会が契機となり、課題だった開高健論を執筆し、「ベトナム戦争と文学-開高健の潰したもの-」(40枚)を『大転換期-「60年代」の光芒-(インパクト出版会、2003・1)に収録されることになった。6月には、明治期文学における東南アジアの位相を探る「海峡植民地-永井荷風の新嘉坡-」(40枚)を掲載した『植民地文化研究』創刊号(不二出版)が刊行。8月16日には、韓国大田で開催された研究会(韓国日本文化学会/文学・思想懇話会共催)で、「戦後的思考-<からゆき小説>と<じゃぱゆき小説>-」と題する口頭発表(60分)をおこない、翌17日の共同討議に参加した。そして、明治期の「からゆきさん」を表象する<からゆき小説>と現代の「じゃぱゆきさん」を表象する<じゃぱゆき小説>を同時にみる観点を打ち出し、課題研究の立場から構想する文学史を提示し、反響を得た9月には、復刻資料「文化人の見た近代アジア」全24巻(ゆまに書房)が上梓、私が「解説」(各10枚)を担当した『萬歳』〔ルビでチャイヨウ〕』(16巻)と寺崎浩『マライの静脈』(19巻)も刊行された。9月29日には、「森三千代と仏印」と題して、植民地文化研究会例会で口頭発表(90分)。従来触れられることのなかった森三千代の仏印体験を明らかにし、その所産を「安南伝説」の翻案に見出した。12月7日には、坂口安吾研究会にて、「坂口安吾とアジア」と題する口頭発表(60分+共同討議)をおこなった。続いて12月21日より台湾に渡り、第5回日台シンポジウムに出席。その後はベトナムにわたり、フィールドワークをおこなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 土屋 忍: "高濱虚子と<南洋俳句>-南洋の「夏」を遊びてモダニズム-"『國文學』(學燈社). 平成15年4月号(3月発行予定)(未定). (2003)
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[Publications] 土屋 忍: "ベトナム戦争と文学-開高健の潰したもの-"栗原幸夫編『大転換期-「60年代」の光芒』(インパクト出版会). 文学史を読みかえる6. 8-100 (2003)
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[Publications] 土屋 忍: "解説岩崎栄著『萬歳(チャイヨウ)』-記録性とユーモア-"竹松良明監修『文化人の見た近代アジア』(ゆまに書房). 16. 1-5 (2002)
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[Publications] 土屋 忍: "解説寺崎浩著『マライの静脈』-戦時下における「戦後」-"竹松良明監修『文化人の見た近代アジア』(ゆまに書房). 19. 1-5 (2002)
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[Publications] 土屋 忍: "海峡殖民地-永井荷風の「新嘉坡(シンガポール)」-"『植民地文化研究』(不二出版). 創刊号. 217-228 (2002)