2002 Fiscal Year Annual Research Report
合理的選択理論による環境配慮行動不実行のメカニズム
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01J07942
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本多 幹子 (篠木 幹子) 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環境配慮行動 / 合理的選択理論 / リサイクル / 環境問題に対する関心 / 正当化 / 計量分析 / 地域 / 制度 |
Research Abstract |
本年度は、環境問題に対する関心が高いにもかかわらず環境配慮行動を実行しない行為者に焦点を当てた正当化モデルのさらなる展開と、計量分析による行為者の特徴の析出を中心とした研究を行った。昨年度の研究によって、正当化モデルは、合理的選択理論に基づいた行為モデルの構築により論理的な解釈が可能となることが明らかとなった。正当化モデルにおいて展開される正当化戦略は、個人によって複数採用される可能性がある。この点を検討するために環境配慮行動の中でもリサイクル行動に焦点をあて、態度と行動の間に矛盾のある行為者を対象としたより詳細な分析を行った。その結果、矛盾のある行為者は一様ではなく、正当化戦略を併用するタイプによって以下のような下位類型に分類できることが明らかになった。 1 正当化戦略を採用しない。このタイプの行為者は、矛盾を抱えた状態のままである可能性が高い。このタイプの行為者は、比較的年齢が高く低収入である。 2 1〜2の戦略を採用する。採用戦略が1つの場合、注意変更戦略が採用される場合が多い。このタイプの行為者はわずかではあるが学歴が高い。戦略が併用される場合は、高コスト戦略が組み合わせの中に入ることが多い。 3 4つの正当化戦略すべてを採用する。このタイプの行為者は、ある程度の年齢、ある程度の収入で、仙台市における居住年数が比較的長い。 これらの正当化戦略の採用タイプによって、リサイクル行動を促進すると考えられる要因の受容可能性に違いがみられることも明らかになった。 さらに、リサイクル行動と地域特性の間の検討も行った。リサイクル行動は地域の特徴を反映した制度の特徴によって強い影響を受ける。とくに、制度に対するアクセスビリティはリサイクル行動を強く規定する。また、仙台市のリサイクルシステムは、隣人関係のような個人のネットワークによって規定される傾向が見られることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 篠木幹子, 荒井貴子, 海野道郎: "リサイクル行動に影響を与える要因の関係"社会学研究. 第71号. 169-190 (2002)
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[Publications] 篠木幹子: "リサイクル行動と正当化のメカニズム-態度と行動の矛盾の解消に関する検討-"社会学評論. 第53巻第1号. 85-100 (2002)
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[Publications] 海野道郎, 篠木幹子, 荒井貴子: "リサイクル行動を促すもの-地域移動歴との関係から促進メカニズムを探求する-"社会学研究. 第72号. 21-41 (2002)
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[Publications] 篠木幹子, 海野道郎: "地域特性とリサイクル-仙台市におけるごみ調査の分析-"社会学研究. 第73号(掲載決定). (2003)