2002 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本社会における社会運動の発生とそのメカニズム
Project/Area Number |
01J07966
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Research Institution | Shinshu University |
Research Fellow |
渡邊 勉 信州大学, 人文学部, 助教授
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Keywords | 社会運動 / イベント分析 / 数理モデル / 集合行為論 / 政治的機会構造 / 抗議サイクル / 進化ゲーム |
Research Abstract |
主として2つの方向で研究を進めた。 第1に、社会運動イベントデータの作成である。昨年度に引き続き、過去30年間の宮城県における社会運動の動向を知るために、新聞記事をもとに、運動の発生に関するデータを作成していった。まだ完成にまでは至っておらず、今年度も継続してデータ作成を行った。さらに同時並行的に全国データ作成もおこなっていった。朝日新聞の見出しデータベースによって、社会運動の主要なイベント行為(デモ、集会、ストライキなど)についてデータを抽出した。 第2に、数理モデルの精緻化である。昨年度は政治と運動組織の関係に注目しながら期待効用モデルと交渉モデルを構築したが、これらのモデルはある一時点における運動の発生を扱っていた。今年度はこれらのモデルを精緻化した。さらにこれらのモデルを基礎にしつつ、運動の増減の時系列的変化を視野に入れた、進化ゲームモデルを構築した。進化ゲームによる分析をおこなうことで、運動の過程を分析することが可能となった。分析結果からは長期的には政治構造が閉鎖的であるものの、一時的に政治体が運動に親和的となる場合に抗議サイクルの波がつくられることが明らかとなった。また従来社会運動の数理モデルは、集合行為論の流れをくんでいたが、そうした研究との関連についても検討を加え、本モデルの特徴を検討した。研究の成果の一部は、第75回日本社会学会で報告した。さらに、社会運動研究おける数理モデルの役割についても、集合行為論を含むこれまでの数理モデルのレビューをおこない、検討した。今後データの完成を待って、モデルの検証を進めていく予定である。
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