2002 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害者の上肢運動の制約とその支援に関する教育心理学的研究
Project/Area Number |
01J08111
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牛山 道雄 東北大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 知的障害 / 上肢運動 / 運動制御 |
Research Abstract |
本年度は課題研究の最終年度であり,以下の事項を実施した. 1.前年度の報告では,どの程度安定して上肢運動を出力し得るかという点については追求できなかった為,検討を行った.その結果,知的障害者は,健常者に比べて変動性が大きいことが示されたが,両者ともに,空間的な制約が高い条件では変動性が大きくなることも示された.昨年度の知見を含めて考えると,知的障害者は,課題実施時の速度プロフィールは健常者と類似性を示すが,その変動性が大きいことが示唆されたと言えよう. 2.1の測定結果と,昨年度収集した知的能力(知能指数)との関連を検討した.その結果,知能指数が高い者程,素早くまとまりのある上肢運動を行うことが示された.更に,この傾向は空間的な制約が高い条件において見られたことから,空間的な制約を上肢運動に円滑に反映する能力と知能指数は関連があることも示唆された. 3.ある経由点を通って2点を鉛筆で結ぶ課題を行った.このときに,鉛筆を紙から離さずに連続して点を結べるかに注目した.その結果,鉛筆を紙から離した者と離さなかった者の間で知能指数に差がなかった.一方,経由点を通らなかった者と通った者の間では差が見られたことから,知能指数に代表された知的能力は,上肢運動を持続させる能力よりも空間的に正確に手先を移動させることと関連が大きいことが示唆された.しかしながら,鉛筆を紙から離した者が全体の約5割おり,このような違いを生じさせる要因については明らかにすることができなかった.また,鉛筆を紙から離した者の中には,施設での生活で中心的な役割を担う者や地域で自立生活活動を行っている者も含まれていたことから,上肢運動の連続性と適応スキルの間には解離があり,質的な差を追求するには至らなかった.
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