2002 Fiscal Year Annual Research Report
連鎖球菌における鉄結合蛋白質(Dpr)を介した酸素耐性機構の解明
Project/Area Number |
01J08169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 裕司 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸素 / 酸素ストレス / 鉄 / ヒドロキシルラジカル / 乳酸菌 / Dpr |
Research Abstract |
連鎖球菌をはじめとする乳酸菌は、カタラーゼを持たないにもかかわらず酸素の存在下で生育できる殆ど唯一の生物であり、その酸素耐性機構は不明な点が多い。私は、口腔内連鎖球菌Streptococcus mutansを材料として、その酸素耐性機構の解明を試みており、これまでに、Dprと名付けた鉄結合蛋白質が本菌の酸素耐性を担っていることを見出した。 昨年度までに、Dpr分子は、単量体が20kDaの12量体からなる球状の複合体(直径9.2nm)を形成する、ferritin様の鉄結合蛋白質であり、最大で複合体当たり480個の鉄原子を結合できる分子であることを明らかとした。また、in vitroでの鉄イオンに依存したヒドロキシルラジカルのアッセイ系を構築し、Dpr分子が鉄触媒によるヒドロキシルラジカルの生成を効果的に抑制することを明らかとした。 本年度は、以下の結果を新たに得た。 1.野生株とdpr欠損株の生体内遊離鉄イオン濃度の測定および比較 ESRを用いて、野生株とdpr欠損株の生体内遊離鉄イオン濃度の比較を行った。その結果、嫌気条件下では野生株、dpr欠損株ともに遊離鉄イオン濃度は90-140μMであったが、好気条件下で野生株では9μMと減少するのに対し、dpr欠損株では、90μMと高く維持されたままであった。 2.ヒドロキシルラジカルによる損傷部位 野生株とdpr欠損株のDNAと蛋白質の損傷を比較した結果、dpr欠損株では、好気条件下で培養することにより、顕著なDNAの分解と、蛋白賓のカルボニル化が認められた。さらに、これら生体分子の酸化は、カタラーゼや鉄のキレート剤の培養液中への添加によって抑制された。 3.Dpr様分子の乳酸菌における分布 乳酸菌5属33株について検討した結果、4属20菌株でDpr様鉄結合蛋白質が認められた。 以上の結果から、鉄結合蛋白質であるDpr分子が、生体内の遊離の鉄イオンを分子内に取り込み、鉄触媒によるヒドロキシルラジカルの生成を抑制することで、DNAや蛋自費の損傷を妨げ、S.mutansに酸素耐性能を付与していると考えられた。また、Dpr様分子は広く乳酸菌に分布しており、カタラーゼによる過酸化水素分解系を持たない乳酸菌において、重要な酸素耐性因子として機能していると推測される。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 山本裕司, 佐々木隆, 佐々木泰子, 本目佳子, 三宅泰司, 神尾好是: "乳酸菌の酸素耐性メカニズム(ショートレビュー)"日本農芸化学会誌. 76. 843-845 (2002)