2003 Fiscal Year Annual Research Report
粘菌の新奇遺伝子(dia1,dia2)を用いた,増殖/分化の切り換え機構の解明
Project/Area Number |
01J08353
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
廣瀬 滋規 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 粘菌 / 増殖 / 分化の切り換え / PS点 / dia1 / fkbp2プロモーター / dia1 / dia2 |
Research Abstract |
1.dia1に関する形質転換体の解析から、dia1の機能とcAMPシグナル伝達系との間には負のフィードバックが成立することがわかった。この結果から、DIA1はPS点からの分化の進行にブレーキをかけ、すべての細胞を形態形成に参加させる役割を担っているのではないかと推測される。そして、DIA1とcAMPシグナル伝達系は負のフィードバック関係にあり、PS点特異的に発現する遺伝子の多くが分化に促進的であることとは対照的であり、PS点での分子機構に新たな視点が与えられた。 2.アンチセンスRNAによるdia2発現抑制株(dia2^<AS>細胞)では細胞集合に顕著な異常が観察される。しかしながら、この発生異常はcAMPのパルスによって救済できた。これによって、DIA2が粘菌細胞の集合期におけるcAMPシグナル伝達系において重要な役割を果たすことが明らかにされた。DIA2タンパク質は細胞内において小胞に局在していることが判明し、DIA2の機能が集合期におけるcAMP分泌である可能性が示唆された。 3.dia1遺伝子のプロモーターは興味深い特徴をもち、fkbp2遺伝子と対をなしてプロモーター領域を共有し、このプロモーター領域は増殖/分化の切り換えに伴って転写方向を切り替えていた。EMSAとプロモーターデリーションによる解析の結果、増殖期と分化期においてこのdia1/fkbp2プロモーター領域には異なるDNA結合タンパク質が結合すること、そしてその標的配列はAAACTGATTAGCTCGATCCCCTであることを突き止めた。なお、この領域は増殖期においてfkbp2遺伝子の発現を活性化する機能をもつ。さらに、fkbp2転写開始点から118bp上流域がfkbp2とdia1の発現に必須であることが明らかとなった。 4.dia1/fkbp2プロモーターの特徴を利用したマーキングシステムの確立によって粘菌細胞の増殖から分化への状態変化を可視化することに成功した。このシステムを用いた実験からアデニル酸シクラーゼ(ACA)、三量体Gタンパク質βサブユニット(Gβ)の増殖/分化の切り換えにおける新奇の役割を見い出した。
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