2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J08391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 健雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | クロモプロテイン / エンジイン / マクロライド / ビラジカル |
Research Abstract |
抗腫瘍性抗生物質C-1027は、9員環エンジイン構造を基本骨格とする化学的に不安定なクロモフォアと、それを包接し、安定化する分子量約1万のアポタンパク質よりなるクロモプロテイン系化合物の1つである。このクロモフォアの9員環エンジインコア部が正宗-バーグマン反応により芳香環化し、発生したビラジカルがDNAから水素を引き抜き、二重鎖を切断する事により強力な抗腫瘍活性を発現すると考えられているが詳細は不明である。 この化合物の全合成にあたり、高度に歪んだ9員環ジイン骨格の構築、3級水酸基へのグリコシル化、アリールエーテル結合を有する16員環マクロライドの構築などの問題を解決しなければならない。前年度までにこれらの問題をモデル化合物を用いて解決したので、実際に全合成へ向け実験を行った。 モデル化合物の情報をもとに、アリールエーテル結合を有する16員環マクロライドを構築し、保護基の変換を行い9員環ジイン構築前駆体のアルデヒドへと誘導した。まずモデル化合物での条件と同じセリウムアミドによる9員環化法では、塩基性が強すぎるためか基質が分解するのみで、9員環化物は全く得られなかった。そこで、中性条件下で反応を行える野崎-檜山-岸法での9員環化を試みたが、反応性が弱く原料が回収されるのみであった。 次に、より塩基性に強い基質での9員環化を行った。基質に存在するアミドの水素が反応を阻害していると考え、アミドをBoc基で保護した基質を合成し、セリウムアミドによる9員環化法を行ったところ、初めてマクロライドを持つ基質での9員環ジイン骨格の構築に成功した。また、基質の水酸基を保護しているTMS基を塩基性に強いTES基に変えたところ収率が大幅に改善されることがわかった。現在得られた9員環化物の詳細なスペクトル解析と全合成へ向けて検討中である。
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