2002 Fiscal Year Annual Research Report
円偏光二色性解析の為の光学活性フタロシアニンを用いたモデル分子の設計・合成・解析
Project/Area Number |
01J08393
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福田 貴光 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フタロシアニン / サブフタロシアニン / 光学活性 / 円偏光二色性 / 磁気円偏光二色性 / 不斉合成 |
Research Abstract |
1、ヘリカル構造を持つフタロシアニン(Pc)の合成と構造解析 4回対称平面分子であるPcから4つの縮合ベンゼン環を除き、隣接した二箇所にアントラセン環を縮合したフェニル置換誘導体を合成した。この化合物はアントラセン部分がヘリカル状に歪んだ構造をとる事を結晶構造解析から明らかにした。さらにこの分子は、光学分割によって円偏光二色性解析の対象に成り得る。結晶充填構造の解析から、この結晶がラセミ晶であることが判明した。 2、光学活性サブPcダイマーの円偏光二色性解析 光学活性ビナフトールを介して2つのサブPc(3同軸を持つコーン状分子)が連結した新規なダイマーに対して、円偏光二色性を含む分光学的解析を行った。その結果、サブPcの立体的効果によって2つの発色団の面角は非常に直角に近く、従って円二色性も非常に弱いことが確認された。さらにこの系は振電準位間の励起子相互作用が大きく、主吸収帯の円二色性は相対的に非常に小さい。そこでこのような悪条件な系に対して詳細な解析を進めるために電子吸収、円偏光二色性、磁気円偏光二色性の3つの分光学データを併用したバンド分解解析を行った。その結果計常に弱い相互作用によって発現するPc誘導体の円二色性の定量的な解析に成功し、溶液中におけるコンフォメーションに関する知見を得ることができた。 3、プロペラ型光学活性Pc寡量体の不斉合成と円偏光二色性 板状のユニットが捩れをなして直線状に伸びていく分子はこれまでに例が無く、その合成は化学の一つの目標とも言える。そこで今回、ビフェニルを介して2つ(又は3つ)のPcがプロペラ状に連結した新規なダイマー(トリマー)の合成を、不斉合成の手法を用いて検討した。キラル誘導化試薬を上手く選択することで構成ユニットであるPcモノマーの収率向上に成功した。さらにダイマー、トリマーの合成にも成功した。高速ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分子量の決定を行い、さらに円偏光二色性スペクトルの測定と励起子法を用いた解析から、プロペラの捩れ方向、捩れ角についての詳細なパラメータを算出し、溶液中における構造を推定した。また、これらのデータは右巻き、および左巻きプロペラの両方を揃え、データの信頼度を高いものとした。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Nagao Kobayashi: "Mono-Aromatic Ring-Fused versus Adjacently Di-Aromatic Ring-Fused Tetraazaporphyrins : Regioselective Synthesis and Their Spectroscopic and Electrochemical Properties"Journal of the American Chemical Society. 124. 8021-8034 (2002)
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[Publications] Takamitsu Letters: "Efficient Synthesis of a Donor-Acceptor Phthalocyanine Having Adjacently-Fused Pyrazine Rings"Chemistry Letters. 866-867 (2002)
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[Publications] Fumio Furuya: "Tetrabenzo-α, γ-diazanorisocorrole : A New Phthalocyanine Analogue"The Science Reports of the Tohoku University. LXXIX. 1-8 (2002)
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[Publications] 小林 長夫: "「未来材料」第2巻第10号34〜41頁 フタロシアニンの機能と応用"(株)エヌ・ティー・エス. 8 (2002)