2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J08557
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺島 徹 早稲田大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中興期俳諧 / 蕪村 / 暁台 / 尾張俳壇 / 百歌仙 / 蕉風 / 連句 |
Research Abstract |
中興期俳壇において活躍した加藤暁台の連句指導を検討するため、暁台評『百歌仙』(名古屋市博物館蔵)についての研究を行った。明和期の暁台が、中興期俳壇における全国的な連句解体の動きを感知し、蕉風復興の第一義的手段として連句指導を盛に行っていた点を重視し、暁台評『百歌仙』をもとにその連句観と門弟指導について考察した。『百歌仙』は、『江戸廿歌仙』の混入という特異な事例を含むが、それは、美濃派俳人が暁台の力量を試そうとした戯れ心から生じたものであった。その行為が図らずも、享保・宝暦期の美濃派・江戸座(浮世風)を超克し、蕉風の「うつり」を重視するという暁台の蕉風志向を、より明確な形で浮かび上がらせることになる。だが、暁台は、芭蕉の冬の日調を目指すものの、高弟の作品には、旧派の名残が散見でき、暁台の理想と現実には、なお隔たりがあったこともわかる。このように『百歌仙』を通じ、暁台という地方系蕉門宗匠の対美濃派、対江戸座への評を同時に俯瞰することにより、中興黎明期の蕉門の位相が俗調と作意性の間で揺れていた点も確認されるのである。また、暁台が従来、式目に忠実であったという説は、江戸座を出自とする蕪村と比較した場合においていえることであった。『百歌仙』における美濃派傍流の俳風と比べた場合、自在性を持ち合わせていたことも明らかになる。 この調査、研究結果をもとに、「明和期における暁台の連句観 -暁台評『百歌仙』を中心として-」(『連歌俳譜研究』103号)として発表した。
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Research Products
(1 results)