2002 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト・メンフィス地域における新王国時代の神殿型平地墓の建築学的研究
Project/Area Number |
01J08569
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
遠藤 孝治 早稲田大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | エジプト / 新王国時代 / 神殿型平地墓 / 日乾煉瓦造建 / 岩窟工法 / メンフィス / アマルナ |
Research Abstract |
古代エジプト・新王国時代における神殿型平地墓の地上構造に関する研究を進めるに当たり、エジプト各地に建造された類例遺構に関する報告などを収集して整理をおこなった。遺構の平面図は可能な限り、コピー機やカメラによって複写したものをコンピューターに取り込んでデジタル処理し、刊行資料によってまちまちである縮尺を統一し、建物の規模に応じた平面構成の比較考察を可能とした。類例遺構の選出はメンフィス地域だけに限定せず、上エジプトのアビュドスや、ルクソール、ヌビア地区の例も視野に入れ、特に中庭に立てられた柱の種類や配置の仕方、本数について分類を試みた。 新王国時代の日乾煉瓦造建築技術については、昨年度夏に引き続き、多数の遺構が残存する中部エジプトのアマルナ地区に調査に赴き、とりわけ煉瓦の組積方法や基礎工法に関わる箇所についてメモ写真の撮影をおこなった。例えば、アマルナ地区における大規模な塔門では、煉瓦壁体を補強するために木材を入念に格子状に組んだものを挟み込んでいるが、ダハシュール北地区における貴族のための神殿型平地墓では、煉瓦積みの幾層かごとにアシ茎を挟むだけであり、建物の規模や格式によって異なる工法が臨機応変に採用された可能性が指摘された。アマルナ地区での調査研究の成果として、日本建築学会の学術講演(金沢)をおこない、その一部を大幅に加筆修正して計画系論文報告集に論文を発表した。 岩窟工法による地下構造の掘削工程に関する研究としては、昨年から引き続き当時の労働記録の解読をおこなっている。トリノのエジプト博物館に収蔵されている王墓の建造工程見積が記されたパピルス文書なども比較資料として用いながら、新王国時代における岩窟墓の建造について、遺構に残された日付や寸法などの文字記録から推定される1日当たりの掘削量が、同時代の文書史料から求められる値とも大きく変わらず、妥当であることを明らかにした。この成果は、マドリードで開催された第1回国際建設史会議において発表をおこなった。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 遠藤孝治: "マルカタ王宮内にあるアマルナ型住宅Aの中央広間に関する復原的考察"日本建築学会学術講演梗概集. Vol.F-2. 631-632 (2002)
-
[Publications] 遠藤孝治: "マルカタ王宮内のアマルナ型住宅について"日本建築学会計画系論文集. No.560. 283-288 (2002)
-
[Publications] Takaharu, Endo: "On the Daily amount of excvation for the construction of the rock-cut tomb during the New Kingdom Period of Ancient Egypt"Proceedings of the First International Congress on Construction History, Madrid, 20^<th>-24^<th> January 2003. Vol.II. 811-815 (2003)
-
[Publications] 遠藤孝治, 西本真一: "古代エジプトの石切り場調査の概要報告 2001-2002"西アジア考古学. 4号. 117-127 (2003)