2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J08596
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田里 千代 早稲田大学, 人間科学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 遊び / 文化維持 |
Research Abstract |
本年度は、これまでのフィールドワークの経験に基づき、遊びの民族誌的考察という方法論について検討した。遊びを研究する際には、常に遊びを定義することの難しさに直面する。特に、本研究の調査対象であるフッタライトの既存の研究では、ことさら厳格な生活スタイルを強調するあまり、人々は一切遊びに興じていないような印象を与えてきた。民族誌的考察は、研究者が実際に当該杜会に身を置き、生活を共にすることにより杜会的・文化的現実を把握することと理解されでいる。したがって、フッタライトを対象とした遊びの考察においては、彼らと生活を共にすることでそうした現実を把握し、他の文化要素との関連性のなかで遊びを捉える方法をとっている。 フィールドワークでは、遊びを「日常的実践」として把握した。この場合の日常的実践とは、「人々のもののやりかた」であり、生活の慣習と言い換えられるが、人々はただ単純に習慣を反復しているわけではなく、それぞれの生活の場面において能動的に社会と関わることで主体的に社会的世界を構築していく過程を指す。したがって、遊びについての参与観察は、生活のさまざまな場面における人々の遊び方、またはいかに遊びを解釈するのかを読み解く作業となる。 フィールドワークに基づく民族誌的考察により、これまで見落とされてきた遊びと労働が渾然一体となった状況や、個人的な楽しみごととしての遊びが生活に織り込まれていることに気づく。こうした遊びがあることで、彼らの生活が宗教的な規範に縛られた受動的なものではなく、日常的実践として能動的な生き方に主体的に関与させているのである。 以上で述べた民族誌的考察の方法論の検討については、「遊びの民族誌を書く〜フィールドワーカーのまなざし」と題し、日本体育学会第54回大会スポーツ人類学分科会キーノートレクチャーとして発表した。
|