2002 Fiscal Year Annual Research Report
美と政治の関係に着目したM・ウェーバーの多元主義的政治思想の成立に関する研究
Project/Area Number |
01J08612
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野口 雅弘 早稲田大学, 政治経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | マックス・ウェーバー / 自然法 / 西洋 / ポリフォニー / 全体主義 / エリック・フェーゲリン / ゲオルク・ジンメル / 闘争 |
Research Abstract |
本年度の研究は、以下の3点に要約することができる。 まず、5月に熊本で開催された政治思想学会に参加し、「ウェーバーと自然法」と題する発表を行なった。この発表では、(1)反自然法論者ウェーバーという従来の図式では等閑視されてきたが、ウェーバーが自然法に強い関心をいだいていたこと、(2)自然法が彼の西洋理解にとって中心的な位置を占めること、(3)彼の西洋概念が--中国、インドの文化との対比において--諸価値領域の非従属的で、緊張を孕んだ関係によって特徴づけできること、(4)こうした西洋理解が彼の「音楽社会学」におけるポリフォニーの議論とパラレルであること、(5)禁欲的プロテスタンティズムにおける自然法観念の変容が、その「現世支配の合理主義」と密接に結びついていおり、近代へのブレーク・スルーを可能にした一方で、西洋「中世」的なポリフォニックな社会秩序を破壊するものであったこと、を示した。 次に、この発表をもとにして、また近年ドイツにおける「西洋」概念をめぐる議論を批判的に検討しつつ、論文「ウェーバーの比較文化社会学における自然法」を執筆した(来年度発表予定)。またウェーバーの西洋理解とプロテスタンティズム的近代の対立関係を手がかりにしつつ、冷戦の終焉以後の全体主義研究ルネサンスならびにテロリズム、原理主義の議論を参照しながら、「『ウェーバーと全体主義』再考--エリック・フェーゲリンの視角から--」と題する論文の執筆に取りかかった。 最後に、美と政治の関係に着目して、ウェーバーの政治概念、とくに闘争概念を明確化すべく、ジンメルの「闘争の社会学」との対比というテーマに着手した。ウェーバーの抗争的多神論とジンメルの美学主義的汎神論の差異とその政治理論的意義を明らかにすることが今後の課題である。
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