2002 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波誘電分光法による水の動的構造と生体物質の機能発現機構
Project/Area Number |
01J08615
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 高彰 早稲田大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 誘電分光法 / 水素結合液体 / 活性化エンタルピー、エントロピー / 疎水性 / アミノ酸 / ダイポールモーメント |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、ドイツRegensburg大学に約半年間渡航し、誘電分光測定をミリ波領域まで拡張した。 (A)100MHz-89GHzで得られた水/2-プロパノール、水/エチレングリコール、水/tert-ブタノール系等の誘電緩和スペクトルから、各緩和過程を高精度で分離した。(i)水素結合システムの共同運動、(ii)アルコールモノマーの回転モード、(iii)フリーのOH基のクリッピングモーション及び水単分子の回転、に関する3つの過程に普遍的に帰属されることを示し、2成分混合の水素結合液体の緩和機構に関する新しいモデルを得た。 (B)活性化エンタルピー、エントロピーの過剰部分モル量を定量的に分離・評価する独自の解析法(the Excess Partial molar Activation Quantity=EPAQ approach)を用い、特に、水/2-プロパノール系、水/1-プロパノール系の結果の比較から、疎水基の形状と水素結合液体のダイナミクスの関連について詳細な情報を得た。水素結合ネットワークの組換えを阻害するアルコール疎水基による局所的な水分子の密度低下のみでなく、アルコールOH基が次の水素結合パートナーを得る確率に関係する、疎水基の立体障害効果が水素結合の再配列ダイナミクスに重要な役割を果たすことを示した。 (C)生体物質の機能を水との相互作用の観点から明らかにする基礎として行った、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Pro、Cys、Metの10種のアミノ酸水溶液の研究では、アミノ酸分子の回転拡散(j=1)、バルク水の共同運動(j=2)、水単分子の回転(j=3)、に関する3つの緩和プロセスの存在を明らかにした。(i)純水中とアミノ酸水溶液のバルク水プロセス(j=2)のKirkwoodファクターの比較による、アミノ酸との相互作用によって外部電場に対する配向が凍結したかに見える溶質1個当たりの水分子の数=「実効水和水Z」の見積り、(ii)アミノ酸分子の回転拡散(j=1)プロセスの緩和強度からのアミノ酸の双性イオンの気相ダイポールモーメントμ_Gの定量的な計算、により、(i)アミノ酸の側鎖グループの疎水性の増加と共に実効水和数Zが急激に増加するが、疎水性の高いアミノ酸では濃度の増加と共にZは急激に減少し、アミノ酸疎水基の急激な会合を示唆する。(ii)μ_G(〜12-13D)はアミノ酸の濃度によらず、ほぼ一定であり、高濃度域においてもアミノ酸のダイポールーダイポール回転相関は無視できる。という驚くべき結果を得た。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] T.Sato, A.Chiba, R.Nozaki: "Composition-dependent dynamical structures of monohydric alcohol-water mixtures studied by microwave dielectric analysis"Journal of Molecular Liquid. 96-97. 327-339 (2002)
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[Publications] 佐藤高彰, 千葉明夫: "水とアルコールは混ざらない?"日本熱測定学会誌. 29-4. 184-185 (2002)
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[Publications] T.Sato, A.Chiba, R.Nozaki: "Dielectric relaxation mechanism and dynamical structures of alcohol-water mixtures"Journal of Molecular Liquid. 101. 99-111 (2002)
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[Publications] T.Sato, R.Buchner: "Dielectric relaxation spectroscopy of 2-propanol-water mixtures"Journal of Chemical Physics. 118. 4606-4613 (2003)