2002 Fiscal Year Annual Research Report
高赤方偏移宇宙における天体分布の定量化とその宇宙モデル検証への応用
Project/Area Number |
01J08914
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西岡 宏朗 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銀河 / クェーサー / 赤方偏移サーベイ / バイアス / 幾何学的歪み |
Research Abstract |
昨年度に引続き、銀河、クェーサー広域観測計画(2dF、SDSS)により得られる天体の3次元分布地図を利用した、宇宙の構造形成の理論モデル検証法の確立を目的として研究を進めた。昨年度までの研究では、比較的近傍の銀河赤方偏移サーベイをターゲットとしてバイアスパラメータb(物質分布と銀河分布を関係付けるパラメータ)の時間進化を取り出す方法の開発を行った。しかし、昨年度までは銀河分布の幾何学的歪みの効果が考慮されておらず、実際の観測データを扱う際に宇宙モデルを仮定しなければならないと言う欠点があった。そこで、本年度はさらに、幾何学的歪みを考慮し、宇宙モデルを仮定する事なくバイアスの時間進化の情報を取り出せる方法への拡張を試みた。 ここでは、Nakamura, Matsubara & Suto (1998, ApJ, 494, 13)により提案された方法を採用した。この方法では、特異速度による赤方偏移歪み、幾何学的歪み、時間進化の効果を同時に考慮し、赤方偏移空間での二点相関関数を赤方偏移zの、1次までで展開を行い、その表式を利用して、密度パラメータΩ_m、減速パラメータq_0及びバイアスの時間進化を表すバイアスパラメータのzに関する一階微分dln b/dz|_<z=0>を決定する方法を提案している。まず、第一段階として、この方法で決定されるパラメータのestimatorを定義し、それらのvarianceを計算した。それを実際のサンプルの場合に適用する事により、実際にどのような制限がつけられるかの見積もりを行った。SDSSの銀河サンプルの場合を想定した結果、パワースペルトルのquadrupoleとmonopoleの比を扱ったde Laix & Starkman (1998)の結果に近い結果が得られ、特異速度による赤方偏移歪みから制限される、パラメータβ【similar or equal】b/Ω^<0.6>_mのΩ_mとbの縮退が、幾何学的歪みにより解ける事が示唆された。しかし、この解析は近似的なもので、また線形理論の範囲のものであるため、制限の見積もりがunderestimateされている可能性がある。今後、疑似サンプルを用いた詳しい解析が必要である。
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