2002 Fiscal Year Annual Research Report
フィンランドのUniversity-to-Work政策の有効性に関する実証的研究
Project/Area Number |
01J08918
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
渡邊 あや 広島大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高等教育 / 教育政策 / フィンランド / 大学と労働市場の接続 / 就職 |
Research Abstract |
1990年代初頭のバブル崩壊以降、失業率が急上昇したフィンランドでは、その改善を図るべく、University-to-Workにかかわる問題の改善に取り組んできた。この問題に対するフィンランドの政策的取り組みは、直接的な就職支援型の取り組みのみならず、多角的・多層的な形で進められている。昨年度は、具体的な取り組みについて明らかにしたが、本年度は、これらと他の高等教育政策、とりわけ、近年の高等教育の重要課題として国際的な潮流となっている国際化や情報化との関係の解明を試みた。 実際、これらと大学と労働市場間の接続との関係は深い。例えば、国際化政策において最も重視されている学生の国際移動についてみると、その最大の目的は、「国際化する労働市場において魅力的なフィンランド人の育成」であり、「学生の雇用可能性の向上」である。もう一つの大きな軸である情報化においても同様の見解が示されている。 このようにUniversity-to-Workにかかわる問題は、高等教育研究の観点から数多く取り組まれてきたが、社会・経済政策とも密接な関わりを有している。フィンランドは、自らの近未来像を知識基盤社会と定め、このビジョンに基づいて、社会・経済の抜本的な改革を行った。こうした中で、高等教育機関の役割もより詳細な形で明確化された。これは、結果として、大学と産業、大学と社会の連携を強化し、大学と大学外の社会間、とりわけ産業との間にあった壁を取り払った。このことが、大卒者の雇用促進にもプラスの影響を与えている。 国家が一体となった政策展開によって、フィンランドが不況を脱したように、高等教育がこうした中に位置づけられ、高等教育機関が戦略的に改革されたことがUniversity-to-Work政策を効率的・効果的に展開させることを可能にしたと結論付けられる。
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Research Products
(2 results)