2002 Fiscal Year Annual Research Report
2次元超高速非線形分光法の開発と分子集合体励起子ダイナミックスへの応用
Project/Area Number |
01J09218
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 薫 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 赤外パルス光 / 非線形分光 / 3パルスフォトンエコー / 過渡回折格子法 |
Research Abstract |
今年度はフェムト秒3パルスフォトンエコー法の実験装置を用い、OCN-やSCN-の反対称伸縮振動やFe(CN)_6^<4->のCN伸縮振動などの振動ダイナミクスを調べた。実験ではフォトンエコーの信号をτとTの2つの遅延時間に対して、2次元に展開することによって、遷移エネルギーに対する時間相関関数についての情報を得る。さらに信号を波長分解し、τと波長軸の2次元に展開することにより、3番目のパルスの後に生成されたv=0-1のコヒーレンスとv=1-2のコヒーレンスの寄与をわけることができる。まず、メタノール中のOCN-やSCN-の反対称伸縮振動を励起した場合、T=0fsではフォトンエコーの1次のモーメントは約300-400fsであったがTを大きくするにつれ、その値が小さくなっていることがわかった。エコーの1次のモーメントの時間原点からのずれは遷移周波数の揺らぎの不均一性の寄与によるものである。1次のモーメントの減衰の時定数が約4psであることから、溶媒和のダイナミクスがこの時間スケールで起こっていることがわかった。D_2O中のFe(CN)_6^<4->のCN伸縮振動を励起した場合では、フォトンエコーの1次のモーメントの時間変化から、溶媒和過程が1.5psのタイムスケールで起こっていることが示された。また、過渡回折格子の信号の時間変化には1.5-2.5psの速い減衰成分と25ps程度の遅い減衰成分が含まれていた。偏光依存性の測定から、速い減衰成分は3重に縮退したT_<1u>モードでのポピュレーションの平衡化、あるいは回転緩和によるものと考えられる。また、遅い減衰成分は振動励起状態の寿命を表わしている。現在、H_2O中における実験を行っており、振動ダイナミクスにおける溶媒の役割を詳しく検討しているところである。
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