2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09249
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 直人 神戸大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | アリストテレス / アナロギア / 可能態-現実態論 |
Research Abstract |
アリストテレスにおける「アナロギア(類比)」概念をキーワードに、アリストテレス哲学における解釈上の諸問題の解決、古代・中世哲学史の連続的把握、応用倫理学上の諸問題への新たな視点の提供を目指すという長期的視野のもと研究を進め、本年度は主に以下の研究成果を生み出した。 1.エネルゲイアとキーネーシス(運動)を区別した『形而上学』Θ巻第6章1048b18-35について、Θ6の文脈内での位置付けとテキストの信頼性についての検討を含む分析を行った。この箇所に見られる価値論的教説はΘ巻の一連の文脈の中ではやや違和感を与えること、そしてこの箇所の主張自体はアリストテレスに帰し得るが、後代の挿入かもしくは補足的議論と考えられることを指摘したこの論文は『愛知』(神戸大学哲学懇話会編)に掲載される。 2.アリストテレス『形而上学』Θ巻における二つのデュナミス(能力と可能態)の内実と関係、およびΘ6におけるアナロギアの意義を探った。両デュナミスは種類を異にするというよりむしろその差異はパースペクティブ上のものであることを示した。またΘ6のアナロギア(<現実態:可能態>関係の類比的説明)には、<運動:能力>から<形相:質料>へ向かう方向性が見られ、Θ巻前半の<運動:能力>図式の提示はアナロギアの起点として方法論的意義を有することを指摘した。なおこの2については現在も更に検討を重ねている。 3.現在研究途上であるが、古代と中世特にアリストテレスとトマスのアナロギア概念についてそれぞれの様式と異同を整理・検討した。アリストテレスのアナロギアについては、比例に留まらず類推的側面が多分に見られるなど特徴的な様式を有することを示した。またトマスの「存在の類比」の源泉について、アリストテレスにおける帰一性の議論や新プラトン主義の分有思想に留まらない要素の存在を見出しつつある。
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