2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09370
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Research Institution | Kobe University |
Research Fellow |
眞野 美穂 神戸大学, 大学院・文化学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 機能主義的アプローチ / 願望文 / 可能文 / 経験の想定 / イベントモダリティ / 持ち主の受身 / 所有 / 所有の分離可能性 |
Research Abstract |
本年度は研究指導の委託のためカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校で研究指導を受け、研究を行った。機能主義的アプローチを主体とするサンタ・バーバラ校の言語学科において、様々な研究者や大学院生との討論や授業、研究会を通し、機能主義の枠組みに関する知識、そして言語の分析に関する様々な視野を広めることができた。また、日本語と類型的にまったく異なる言語であるアフリカの言語ディダのフィールドメソッドにも参加し、当言語における非規範的構文の出現に関しても知見を得ることができた。 (1)On the Desiderative in Japanese ミスン教授の指導のもと日本語における願望文の研究を行った.日本語の願望文には二重主格という非規範的格フレームを取る派生接辞「-たい」と形容詞「ほしい」があり、第二項名詞句への主格付与は任意であると言う特性を持つ。また主格付与にはいくつかの制約があることが指摘されている。願望や能力を表すモダリティに関しては、その位置づけが研究者間でも別れており(Bybee et al. 1994, Palmer 2001等参照)、類型的に議論されるべき問題が多数残されている。これらのモダリティはイベントモダリティの一種と考えられているものであり、モダリティ形式とその命題との融合が起こりやすい。本研究では、日本語の願望文におけるスコープの違いから、格標識の違いを構文機能の違いに還元し、類型的モダリティ研究において、特にイベントモダリティではその対象を明確化する必要があることを指摘した。また、同様に非規範的格フレームを取る可能文と比較することにより、先行研究におけるモダリティの分類に関しても議論を行った。また、同校で行われたワークショップ(WEAL)において本研究の口頭発表を行った。 (2)「所有関係と非規範的構文について」 非規範的受身文である「持ち主の受身」に関しての研究では、その機能を「所有者が所有物への影響を通して直接的または間接的に影響を経験することを示す」ことであることを主張した。そして、身体部位など分離不可能所有では必ず所有者が直接的に影響を経験すると想定されるため、外置が義務的であるということを示した。本論文は論文集の一部として投稿中である。
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