2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09377
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
甘利 弘樹 筑波大学, 歴史・人類学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 明朝 / 清朝 / 華南山間部 / 地方統治 |
Research Abstract |
私は、研究計画に沿って、前年度の成果を補充するために、本研究課題において、極めて重要な位置を占める档案史料(満文・漢文)及び地方志・文集の収集・解読を引き続き重点的に行った。その成果として、『明朝档案』が、明末の地方統治に関して多様でしかも重要な情報をもたらす史料であること、また、満文史料である『密本档』が、清初の地方統治全般に亙る未だかつてない詳細な内容を多く含んでいることを確認できた。そして上述の史料に依拠しつつ、明初から清初まで(14世紀末〜17世紀中葉)の華南山間部に対する統治政策の一つとして、新行政区画の設置、具体的には新県設置がいかなるプロセスで行われたかを分析した。その結果、特に明代中期以降、新県設置が、華南山間部統治に大きな障害となっていた山寇(山賊)に対する有効な施策として、当該地域の紳士層及び地方官に強く望まれており、その背景として、強力に組織化された山寇に対抗するために、紳士層・地方官の間に、新県の下で郷約・保甲に基づく組織を作ろうとする意図があったことを見出した。また、明末の広東東部地域における新県設置の具体的事例を分析することを通して、治安不良の状況下で、紳士層を中心とする住民の強い推進・協力によって県が設置されるという新県設置のスタイルが、華南地域において普遍的に存在していたことを示した。その一方で私は、地方官の動向に注目し、明末の広東東部地域における新県設置が、財政状況の悪化・民衆の困窮という状況に配慮して、費用の大部分を地方官が負担するかたちで実行され、山寇の活動の抑止に効果をもたらしたが、行政区画変更に伴う賦税徴収体制の混乱や当時の広東の地方官界の乱れを反映して、行政上十分な機能を果し得なかったことをより詳細に解明した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 甘利 弘樹: "明朝档案を利用した研究の動向について-『中国明朝档案総匯』刊行によせて-"満族史研究. 1. 73-91 (2002)
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[Publications] 甘利 弘樹: "中国第一歴史档案館蔵『密本档』について"満族史研究. 1. 124-133 (2002)
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[Publications] 甘利 弘樹: "『中国明朝档案総匯』について"汲古. 42. 46-50, 62 (2002)
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[Publications] 甘利 弘樹: "『広東新語』にみる広東の山寇の性格"栃木史学. 17. 40-56 (2003)
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[Publications] 甘利 弘樹: "明朝における新行政区画の設置-広東鎮平県・連平州の事例-"明代史研究会創立三十五周年記念論文集. (予定). 175-196 (2003)