2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09446
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長沼 圭一 筑波大学, 文芸・言語学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 無冠詞名詞句 / 役割記述機能 / ラベル / メタ言語 / 無冠詞名詞文 / 同格的表現 / 支え / 言語外レベル |
Research Abstract |
本年度は,現代フランス語における無冠詞名詞句について,これまでの研究の再考を試みた. まず,昨年度主たる研究対象として扱った,コピュラ文の属詞として現れる無冠詞名詞句について再考し,その成果を学会において口頭発表を行い,さらに一本の論文としてまとめた.とりわけ「役割記津機能」に重点をおいて,性別を表す名詞がコピュラ文の属詞位置に現れる例を出発点とし,職業や星座などを表す名詞に発展させ,役割記述機能を持つ無冠詞名詞句の特性についてより明確にした.属詞位置にfemmeという語が無冠詞で現れる場合,「女らしい」という解釈と「女性である」という解釈の二つが可能である.前者の解釈の場合には「性質記述機能」が働いており,後者の解釈の場合には「役割記述機能」が働いている.属詞位置の無冠詞名詞句が役割記述機能を持つためには,社会的・文化的分類の操作が働いており,分類すべきクラスがあらかじめ設定されていることが条件として挙げられる.このような名詞句が無冠詞で現れるのは,クラスそのものを表す無冠詞のラベルがメタ言語的に属詞位置に用いられているからであると考えられる. また,昨年度末に学会発表を行った,無冠詞名詞文と同格的表現に現れる無冠詞名詞句の比較について再検討し,一本の論文に仕上げた.無冠詞名詞文は,先行研究において「ラベル」として記述されていることから推測されるように,自立性がなく,支えを必要としている.この支えは一見名詞句や文として現れているように思われる場合もあるが,厳密には文脈によって構築された言語外レベルの具体物や出来事などが支えとなっていると考えられ,このように考えることにより無冠詞名詞文全体に対して一貫した説明が可能となる.無冠詞名詞文は,支えに対する依存という点において,同格的表現と共通する意味構造を持っていると言える.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 長沼 圭一: "役割記述機能を持つ無冠詞名詞句について-quand on est femme, on ne dit pas ces choses-la-"フランス語フランス文学研究. 第83号. 90-100 (2003)
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[Publications] 長沼 圭一: "フランス語の無冠詞名詞文について-同格的表現との比較による考察-"筑波大学外国語教育論集. 第26号. 165-173 (2004)