2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09550
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近角 真平 筑波大学, 物理学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自己組織化臨界現象 / 開放系 / 分子動力学 / フラクタル |
Research Abstract |
相関距離と拡散係数を計算することを計画していたが、テスト計算の段階で相関距離は高密度の膨張物質を記述するのに適当でないことが判明し、また拡散係数は有効温度にほぼ比例することが判明した。有効温度についてはこれまでの研究で性質がわかっているため、膨張物質の臨界現象を自己組織化臨界現象として理解可能かどうかを調べるために以下の計算を試みた。 1 膨張物質内のエネルギー収支とフラグメントの温度とエネルギー 自己組織化臨界現象は一般に開放系で見出されることがわかっている。膨張物質モデルは開放系になっているが、これまでのコードはそのエネルギー収支が不明瞭であった。そこで時間発展中に系全体が受ける仕事を具体的に計算して、エネルギー収支を具体的に示せるようにコードを改良した。この新しいコードを用いて、系全体のエネルギー・有効温度を、最終的に生成されるフラグメントのエネルギー・温度と比較した。その結果、フラグメント温度は系全体の有効温度を上限に持つ特徴的な分布を示すことがわかった。 2 FCC膨張物質内のフラクタル構造成長 自己組織化臨界現象は、しばしば外場のかかった準安定状態が突然崩壊するときに見出される。そこで、このような破壊現象と類似させるために、膨張物質モデルの初期状態を絶対零度のFCC格子にすることを試みた。地割れは代表的な自己組織化臨界現象として理解されているが、その分布はフラクタルになることが知られている。そこで、FCC膨張物質内の構造に対してBox counting法を適用して、そのフラクタル次元を計算した。興味深いことに、膨張物質内では膨張時間発展中に膨張速度で特徴付けられるフラクタルが成長することが見出された。この現象は、自己組織化臨界現象との関連に加えて、自然界におけるフラクタル生成機構を理解する糸口になる可能性がある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shinpei Chikazumi: "First order phase transition of expanding matter and its fragmentation"Physical Review C. 65. 067601-1-067601-4 (2002)
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[Publications] 近角 真平: "膨張無限系の分子動力学シミュレーション"物性研究 研究会報告「ソフトマターの物理学」. 11月号. 176-176 (2002)