2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09608
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
足立 研畿 筑波大学, 大学院・国際政治経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 対人地雷 / 国際政治 / NGO / 規範 / レジーム / 言説 / コンストラクティビズム / カナダ:アメリカ:日本 |
Research Abstract |
平成14年度は、対人地雷禁止問題に対して、アメリカがいかなる姿勢・政策をとったのか、またそのような政策をとったのはいかなる理由からか、という点について、ワシントンD.C.での現地調査などを通して明らかにした。調査の結果、アメリカ政府内の地雷全廃派と地雷使用継続派の激しい駆け引きが浮き彫りにされ、また、世論やNGO,政府内の地雷全廃派の圧力に押されて、実は、アメリカ政府は見た目以上に、対人地雷禁止政策へと収斂させるためにたゆまぬ努力を行っていたことが明らかとなった。さらに、こうしたアメリカにおける調査結果と、すでに昨年までになされていた日本、カナダにおける調査結果を総合し、いかにして、対人地雷禁止レジームが形成されたのかについて、分析を進めた。その分析は、博士論文「対人地雷禁止レジーム-規範の形成過程における言説対抗」という形でまとめられ、平成14年12月に筑波大学に正式に提出された。そこでは、各国の地雷政策は、地雷を全廃すべきという言説を支持する勢力と、地雷は合法兵器であるという言説を支持する勢力のせめぎ合いの中から決定され、また国際的にも、同様の各言説を支持する国家、NGO、国際機関、個人等の諸アクター間の勢力関係によって、地雷問題に対する対応が決定されていったことを明らかにした。これは、従来の国家中心の国際政治学や、明確な合理性を与件とする政治学理論に対して、オルターナティブを提示し、また、そうした理論では十分に説明できなくなりつつある現状を説明する新たな枠組みを提供するものである。また、他分野の応用可能性が度々指摘されながらも、しっかりと分析が行われてこなかった対人地雷禁止条約の形成過程を詳細に分析した本研究は、実際にいかなる応用可能性が存在し、また他分野に応用する際には、いかなる限界が横たわっているのかを考察する上での重要な材料を提供している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 足立 研畿: "冷戦終焉以後の安全保障の課題への対応-対人地雷禁止条約形成過程を一事例として"国際政治経済学研究. 第9号. 101-111 (2002)
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[Publications] 足立 研畿: "対人地雷全廃レジーム形成過程の分析"国際政治. 第130号. 175-191 (2002)
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[Publications] 足立 研畿: "利益団体とマス・メディア:関係性の諸相"IPE Discussion paper. No.5. 1-20 (2002)
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[Publications] 足立 研畿: "対人地雷禁止レジーム-規範の形成過程における言説対抗"筑波大学(博士論文). 378 (2002)